香港新界のW氏一族の族譜を詳細に読み込み、明代後期から清代後期に至る宗族の人口動態、家族構成・養子・寡婦・側室保持などの家族のあり方、族譜を記録することの中に反映された父系出自の連続性への意志などを、歴史人類学的な手法により明らかにした。無味乾燥な祖先の生死記録と思われている族譜資料を用い、過去の家族の実態とその根底にある価値観をどこまで明らかにできるかに挑んだ意欲的な研究である。