東北大学理学部地球惑星物質科学科
3年生 フィールドセミナー I
2010年6月28日〜7月4日

北海道巡検 概要報告

ウェブページ作成: 石渡 明

参考ウェブサイト

[樽前火山] [有 珠火山] [火山誕生を見守り続けた郵便局長 三松三朗著(pdf)]
[
三松正夫記念館] [大和旅館]

[アポイ岳ジオパーク] [様似町ジオパーク推進室] [ア ポイ岳ファンクラブ] 
[
様似駅前民宿] [アポイの鼓動 様似かんらん岩広場] [東邦オリビ ン工業株式会社]

[日高変成帯・神居古潭変成帯] [日高 山脈館](ここは訪問 しませんでした)

[東北大学東北アジア研究 センター] [石 渡ページ]  
[東北大学理学部地球惑星物質科学科] [東北大学大学院 理学研究科地学専攻] 

2010年08月16日 作成,2010 年08月16日更新


東北大学理学部地球惑星物質科学科  3年生フィールドセミナーI

2010年6月28日〜7月4日 北海道巡検 概要報告

 

指導教員 石渡 明(東北アジア研究センター 教授),平野直人(同 助教),奥村 聡(理学部 助教)

同行職員 亀山敬七,伊藤嘉紀(バス運転)

学生 計22名,男性15名,女性 7名

調査・案内担当班分け

1班(樽前担当)5人,2班(有珠担当)5人,3班(幌満担当)4人,4班(日高担当)4人,5班(三石担当)4人

 

本年度のフィールドセミ ナーIの概要

 本年度は樽前火山(支笏カルデラ),有珠山・昭和新山・2000年噴火西山火口群(洞爺カルデ ラ)の2つの火山と,幌満かんらん岩体,日高帯の付加体,花崗岩,片麻岩,そして神居古潭帯の高圧型結晶片岩と緑色岩の見学を目的として,教員3名(石渡・平野・奥村)が学部3年生22名を引率し,フェリーと大学のバスを利用して出発日・帰着日を含め7日 間の旅行を行った.天気があまりよくなく,雨中での露頭見学になってしまった場合もあったが,事故やケガ・病気もなく,予定の見学地点を全て観察すること ができた.これは安全にバスを運転して下さった亀山さん,伊藤さんをはじめ,昭和新山を案内して下さった三松三朗氏,また幌満地域の露頭の見学に便宜を 図っていただき,バーベキューなどで大歓迎していただいた様似町役場の方々(様似町商工観光課ジオパーク推進係主査 車田利夫様,同室長 水野洋一様,同 係長 原田卓見様,同職員 佐々木 泰様,様似町教育委員会生涯学習課社会教育係 佐々木 将貢様)と懇切にお世話していただいた様似駅前民宿の方々のお かげであり,心から感謝する.そして,三石地域の見学資料をご提供いただいた弘前大学の植田勇人先生に感謝する.(石渡 明・平野直人・奥村 聡)

 

【スケジュール】

628(月)      曇.16:30 地学棟前集合・出発 → JUSCOで 買い物 → 19:40 仙台港発(太平洋フェリー)船中で各自夕食(ミーティングなし)(船中 泊)

629(火)      晴後曇.船中で各自朝食 → 11:00 苫小牧港着 → コンビニで昼食調達 →  樽前山に移動 12:30 樽前山登山開始 途中で昼食,火口縁から火山地形や溶 岩ドーム,軽石,火山弾などを観察 → 洞爺湖西側の展望台から洞爺カルデラ,有珠山,昭和新山の地形を観察 → 18:00大 和旅館(洞爺温泉)着 → 18:30 夕食(各自外食)(朝食の買い出し) →20:45洞爺湖花火大会 → 21:00 ミーティ ング

630(水)  曇時々小雨.各自宿で朝食  08:00 大和旅館発 → 2000年噴火西山火口群見学 → 昭和新山の見学 →   三松正夫記念館見学 → 有珠山南西方で有珠1663年噴火軽石層見学 → 伊達温泉近くの国道沿いで洞爺湖火砕流露頭見学  → 12:00 移動・道央自動車道有珠山SAで 昼食 → 18:00 駅前民宿(様似)着 → 18:30  夕食(宿で)→ 20:00 アポイ山荘で入浴 → 21:30 ミーティング

71(木)        雨時々曇.07:30    朝食(宿で)→    08:30 駅前民宿隣の様 似町役場前の「かんらん岩公園」の岩石を見学 → 10:00 駅前民宿(様似)発(宿で用意してくれた昼食を積み込む) → 幌満かんらん岩体巡検(幌   満川沿いを奥の第6地点(ダムの手前)から下流へ)昼食はアポイ岳ビジターセン ター.昼食後同ビジターセンターを見学.最後に東邦オリビン工業の休止している採石場で岩石採集,幌満川河口で変成岩見学と川原の転石採集 → 17:30 アポイ山荘で入浴 → 18:30 駅前民宿(様似)着,夕食(宿で) → 20:30 ミーティング

72(金)        曇時々雨.07:30    朝食(宿で)→ 08:30 駅前民宿(様似)発 →  広尾〜襟裳岬の日高帯巡検 9:40 広尾漁港立岩メランジュ → 美幌の付加体砂岩・頁岩の露頭 → ビタタヌンケ・トンネル北側出口付近の日高帯花崗岩・斑れい岩 → 雨天 のため,道路脇のシェルター内にて宿で積み込んだ昼食をとる → 庶野漁港で片麻岩とその褶曲を観察 → その南方の露頭で花崗岩中の片麻岩捕獲岩やミグ マタイトを観察 → 襟裳岬でトイレ休憩 → 16:00 アポイ山荘で入浴 → 17:30 駅前民宿(様似)着,様似町役場の方々(後記)が宿の前に設置して下さったテントでバーベキュー (この日はミーティングなし)

73(土)        曇時々雨.07:30 朝食(宿で) 08:30  駅前民宿(様似)で昼食を積み込み出発 → 日高三石の神居古潭帯巡検 9:30 蓬莱山の緑簾石角閃岩,蛇紋岩,角閃岩の褶曲,三石川河原の転石採集 → 山頂のざくろ石,磁鉄鉱を含む石英片岩などを観察 → 蓬莱山公 園センター(パークゴルフ場)で昼食 → 三石川と二俣川の合流点付近で緑色岩を観察 → 14:00  移動 → 17:00 JUSCOで食糧調達 → 19:00 苫小牧港発(各自夕食) → 20:00船内ロビーで2日 分のミーティング(船中泊)

74(日)        曇.船内で各自朝食 → 10:00 仙台港着 → 11:00 地学棟前着(感想文提出,ヘルメット返却) → 解散 (レポートは730日までに提出.レポート用紙5枚以上,10枚以下)

 

フィールドセミナーI終了時提出の学生の感想文から抜粋

○肯定的な意見

・地元の方々にあんなに歓迎されて,個人的にも楽しめました.(あまりに歓迎されたので驚いた,という意見もあり)

・教科書に載っている写真だけではわからないことを勉強できた.(自分の目で見る大切さがわかった,という意見もあり)

・様々な岩石サンプルを採集できた.(採取したサンプルをどうすればいいのか,少々疑問が残った,という意見もあり)

・登山による達成感を味わうことができた.(これは1日目の樽前山登山を指す)

・実習は目的をはっきりして見るのが一番なのだとわかった.

(引率教員,職員,宿の人,地元の関係者に対する感謝を表明した感想文が多かった)

 

要望,意見,問題点

・日程表をもっと詳細・具体的に書いてほしい.(個々の観察地点,観察内容は,学生に配布した日程表には書いてなかった)

・事前学習で具体的にどこを見るのか説明してほしい.(直前の意見にも関連するが,事前学習の発表会の時点ではまだ下見をしておらず,詳しい観察地点は未 定だった)

・実習中,現在どこにいるのかわからない.場所を教えてほしい.(各班に2.5万分の1地形図を配布してあるのだが・・・)

・事前学習の発表目的は論文の発表なのか,見学場所の案内なのか.(これは両方だと思う)

・資料には地形図を載せてほしい.(地形図を載せた班もあった)

・バスがもう少し広い方がよかった.(確かに,補助椅子を使ってやっと全員乗れた状態だった.大学のワゴン車が伴走したが,これは学生の荷物でいっぱいに なり,教員2人乗るのがやっとだった.いずれにしても,ワゴン車を出したのは正解だった.)


★写真集

(大きめの写真は平野直人氏撮影, 日付の入った小さめの写真と偏光顕微鏡写真は石渡明撮影.岩石薄片は石渡明作成)

【2010年6月29日 樽前火山】

支笏カルデラと支笏湖(樽前山登山 道より)

 

樽前火山の溶岩ドーム

樽前火山溶岩ドーム形成時に噴出し たパン皮状火山弾

 

樽前山山頂での記念写真

 

洞爺湖展望台で記念写真


【2010 年6月30日 有珠火山】

2000年噴火の被災家屋

 

噴火によって変形し寸断された道路

噴気活動が盛んな昭和新山

 

有珠山1663年噴火の火山灰層

 

洞爺カルデラ火砕流堆積物


【2010 年7月1日 幌満かんらん岩体】

 

斜長石レールゾライトの層状構造

 

かんらん岩(中央)と斑れい岩(上 下)の層状構造

レールゾライトの変形組織(ポー フィロクラスチック組織).中央の灰色部は斜方輝石.直交ニコル,画面横幅 6 mm.

レールゾライトの変形組織(中央緑 色のかんらん石のキンクバンド).直交ニコル,画面横幅 3 mm. (円形の物体は薄片中の気泡)

幌満レールゾライトの粗粒な輝石ス ピネル集合体.単ニコル,画面横幅 6 mm.

レールゾライトの粗粒な輝石スピネ ル集合体.直交ニコル,画面横幅 6 mm.(上の写真と同視野)

レールゾライトの細粒な輝石スピネ ル集合体とシンプレクタイト(中央の灰色部分).単ニコル,画面横幅 6 mm.

レールゾライトのシンプレクタイト の微細構造.左側がシンプレクタイトと基質の境界.直交ニコル,画面横幅 1 mm

かんらん石斑れい岩.褐色の鉱物は 角閃石.中央部の透明部分は斜長石.単ニコル,画面横幅 6 mm.

かんらん石斑れい岩.中央部の灰色 部分は斜長石.下部の大きい結晶は単斜輝石.直交ニコル,画面横幅 6 mm.


 

【2010 年7月2日 日高帯の付加体と変成岩】

 広尾漁港 立岩の日高付加体メランジュ

黄金道路沿いの日高帯黒雲母花崗岩 (かんらん石斑れい岩を伴う.画面右端の露頭).

庶野(しょや)の日高帯花崗岩に含 まれる変成岩(片麻岩・角閃岩)の捕獲岩

かんらん石斑れい岩.黒雲母(中 央)と角閃石(下部)を含む.単ニコル,画面横幅 6 mm.

かんらん石斑れい岩.黒雲母(中 央)と角閃石(下部)を含む.直交ニコル,画面横幅 6 mm.(上の写真と同視野)

様似駅前民宿前でのバーベキュー. 民宿と様似町役場の方々が準備して下さった.


【2010 年7月3日】

三石の蓬莱山(建物の後ろの小 山).角閃岩でできている.

三石の蓬莱橋付近の角閃岩の褶曲構 造(中央).その下で白く光る多数の結晶は白雲母.

三石の白雲母(中央)を含む緑簾石 角閃岩.緑色の鉱物は角閃石.単ニコル,画面横幅 6 mm.

三石の白雲母(中央)を含む緑簾石 角閃岩.緑色の鉱物は角閃石.直交ニコル,画面横幅 6 mm.(上の写真と同視野)

三石のざくろ石(中央)を含む緑簾 石角閃岩.単ニコル,画面横幅 3 mm.

三石のざくろ石(中央)を含む緑簾石角閃岩.単ニコル,画面横幅 3 mm.(上の写真と同視野)

三石の細粒なざくろ石を含む石英片岩.緑色の鉱物は角閃石.単ニコル,画 面横幅 3 mm. 

三石の細粒なざくろ石を含む石英片岩.大きな黒い結晶は磁鉄鉱.単ニコ ル,画面横幅 3 mm.(上の写真と同視野)

角閃石を取り巻く細粒なざくろ石.単ニコル,画面横幅 1 mm.(上と同じ薄片の他の部分の拡大)


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2010年08月16日 作成,2010 年08月16日更新