今回の上映作品『被ばく牛と生きる』は、福島第一原子力発電所事故後に国から通達された家畜の殺処分命令に反して、被ばくした牛たちを生かそうと決めた畜産農家の活動に密着したドキュメンタリー映画です。経済的負担、精神的苦痛と葛藤を抱えながらも、居住制限区域で暮らし、あるいは仮設住宅から通い続け「被ばく牛」の世話を続けた人々を5年にわたって追っています。
本作の上映とともに、監督の松原保氏、本学大学院農学研究科陸圏生態学分野教授の小倉振一郎氏を迎え、今も続く原発事故の影響、災害の非常事態下で明るみになる人と家畜の関係、社会問題の発見と伝達にドキュメンタリー映画が果たす役割について意見交換を行います。
日時:2018年11月13日(火) 18:15~20:30
場所:東北大学川内北キャンパス講義棟B棟101室(宮城県仙台市青葉区川内41)
プログラム:
第一部 映画上映会18:15~20:00
第二部 意見交換会20:00~20:30
[登壇]松原保氏(『被ばく牛と生きる』監督)
小倉振一郎氏(東北大学大学院農学研究科陸圏生態学分野 教授)
入場料:無料/参加申し込み:不要
上映作品
『被ばく牛と生きる』
福島第一原子力発電所事故から1ヶ月後、国は20km圏内を「警戒区域」に指定、立入を厳しく制限しました。同年5月、農水省は、放射能に汚染された食肉を流通させないため、20km圏内にいる全ての家畜の殺処分を福島県に通達しました。明日の我が身も知れず強制避難を強いられた畜産農家は通達に従うしかありませんでした。しかし殺処分の方針に納得できず、牛を生かし続けようとする畜産農家が現れました。
事故の痕跡をリセットしたい国にとって、原発事故の生き証人ともなる「被ばく牛」はやっかいな存在となっていきます。被ばく牛を生かし続けてきた農家も徐々に心が折れていく…長期にわたる経済負担、避難先での老老介護などやむをえぬ事情から脱落していきました。
原発事故から5年、十数軒あった反対農家は5軒となりました。故郷も仕事も奪われ、それでも経済価値のない牛を生かし続ける農家の刹那と悲哀を静かに描くドキュメンタリー映画です。