漱石門下の阿部次郎(1883-1959)は、『三太郎の日記』を著し、大正教養主義を牽引した。しかし留学を経て東北帝国大学教授となり、それまでの西洋学に加えて日本文化研究に取り組んだ40歳代以降については知られること乏しい。だが近年、東北大学史料館に新発見の書簡約4千点が寄託され、その調査による研究の進展があった。本書はそうした成果により仙台時代の活動に光をあて、新たな姿を多面的に再検討する。