羽鳥先生の「資源と環境」に学ぶ*

 

石渡 明**

 

「地学教育と科学運動」64号35-40ページ(2010年12月,地学団体研究会発行)

地学団体研究会の許可を得て本ホームページで2012年8月3日に公開

 

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*「羽鳥さんに学ぶ会」(都立富士高校)で一部講演

**東北大学東北アジア研究センター 〒980-8576 仙台市青葉区川内41


       

      目次

1. はじめに (第1図. 羽鳥謙三先生

2. 「資源と環境とは」

3. 地球環境問題から地球温暖化問題へ

4. 地球温暖化問題についての疑問

  第1表 地球型惑星の温度

  第2図 最近120年間の気温とCO2排出量の変化

  第3図 過去40万年間のCO2量の変化

  第4図 過去3000年間の海面温度変化

5. 結論1. 地球温暖化問題について

6. 結論2. 地学教育について

7. 追記

8. 文献

 

[石渡ページ]  [追悼:名誉会員 羽鳥謙三先生を偲ぶ] [地学団体研究会]

 


 

はじめに

小論は,2010214日に都立富士高校で開催された「羽鳥さんに学ぶ会」(羽鳥先生の奥様と息子さんを含め60人ほど出席)における私の講演をまとめたものである.羽鳥謙三先生(1)は200992日に81歳で逝去された.先生の履歴・お人柄・業績などについては,先生が本誌特集号として出版された自伝的著作(羽鳥 2004)や追悼文(大澤 2009; 樋口 2009; 石渡 2009)を参照されたい.小論では,「資源と環境」と題する先生の著作を取り上げ,現今の地球温暖化論争について考えてみたい.ただし,私は資源や環境の専門家ではないので,小論には誤り,見落とし,勘違いなどが多々あることを恐れる.読者のご叱正をお願いする.

 

第1図. 羽鳥謙三先生.奥多摩にて1969年石渡撮影.

 

資源と環境」とは

「資源と環境」は,1993年出版の共愛女子短期大学公開講座「地球環境と地域社会」に掲載されている羽鳥先生の講義録である.見出しを列挙すると,

1.はじめに(エコロジーとは,人類と共にあった環境問題)

2.たぐいまれな地球環境

3.地球資源の形成

4.資源利用の発展(製鉄の歴史,産業発展の光と陰)

5.二酸化炭素と地球温暖化(招かれざる客,温室効果,地球における炭素の循環,気候温暖化の将来)

6.大気汚染と酸性雨(公害先進国日本,大気汚染・酸性雨の発生機構,酸性雨の影響,世界の三大ワースト地域,酸性化防止対策)

7.放射能と原子力問題(原子力と放射能,原子力発電の諸問題,原発事故,放射性廃棄物,核戦争と環境破壊)

8.エネルギー問題(「湯水のように」,エネルギー利用の見直し,資源枯渇,代替エネルギー,エネルギー効率化,廃熱利用と省エネ,ヒートポンプ,熱の段階的利用,器具の問題,原発の問題,総合的工夫改善),

9.発想転換の時代

となっている.

 羽鳥先生は,都立神代高校教師時代の後期(私が同校を卒業した1971年より後.当時は地学を含め理科4科目が必修だった)に,それまで1つだった地学が地学Tと地学Uになり,文系受験の3年生に地学Uを教えることになった時,人類学関係の書籍を100冊以上読んで人類史の授業内容を作られた,ということを先生から直接伺ったことがある.この授業は,先生が1988年に共愛女子短期大学に移られてからも,「人類進化論」というタイトルの更に充実した講義として実施され,羽鳥 (2004)の第6章には90分講義30コマの題目と簡単な内容が列挙されている.私はその人類史の授業を聞くことができなかったのが残念であるが,その後先生は,人類史の場合と同様に猛勉強されて,大学での「地球環境論」の新しい講義内容を構築された.羽鳥 (2004)の第7章に,その15コマの講義題目と内容の概要が紹介されている.この「地球環境論」の講義をかいつまんで一般向きに取りまとめた公開講座の内容を文章化したのが,この「資源と環境」である.今それを読むことができるのは幸せである.

この講義録には,「エコロジーやエコノミーの『エコ』はギリシャ語の『家』に由来する」,「有限な系である地球自然界の中での物質や生物の収支決算を正しくつかんでおかないでいると,経済の破綻どころか,地球の破綻となって人類の生存自体が危うくなる」,「マンモスは人類の狩猟で絶滅した」,「『地球がだめなら宇宙があるさ』はただの夢」,「環境問題の基本は科学技術ではなく政治と経済にある」,「地下シェルターを用意するよりももっと“核アレルギー”を世界にアピールするほうがだいじ」,「人類史は矛盾の繰り返し」,「人間があまり勝手なことをすると木も草も自然界も怒る.自然は報復する.バチがあたる」,「自然は子孫からの借り物だ」などの蘊蓄(うんちく)や名言が盛り沢山である.

この講義は,資源と環境の問題を様々な側面から要領よくまとめているが,それだけでなく,学生一人一人が発想を転換し,自分の生き方として,資源や環境の問題に対処する指針を与えようとしている.エネルギーの無駄使いをやめれば,原発に頼らなくても文化的な生活ができる,環境負荷に対して責任を持つために外部コストとしての環境税や炭素税を払うのはやむを得ない,「将来子孫が使うべき自然をわれわれは損ねないようにして使い,そして彼らに引き渡すのだ.いや,返していくのだ」.「自分も他人も子孫も外国人も取り込んだ観念は地球環境論の基本点」.そのように発想を転換して,かつて人類が狩猟採集生活から農耕牧畜生活に移行したように,無制限な環境破壊を伴う現在の工業化社会から,一人一人の努力で人類全体の持続的生存が可能な社会への移行を実現しようという方針を示している.

 この本は「共愛の学生以外あまり買い手がなかった」(羽鳥 2004)ようで,先生は在庫の一部を引き取って知人(私を含む)に配布した.羽鳥(2004)には,「この本の結論はわれわれ世代が体得してきた自己規制的倫理の強調にあると見た」という,ある知人の的を射た読後意見が載っている.要するに「ケチの勧め」,「『もったいない』精神」だという感想である.しかし,先生は「倫理観の普及と罰則の強化で奴隷制が地球上から一掃された」事例を励みにして,資源やエネルギーの無駄使いは許さないという「強力な政治力と,それを受け入れるべき社会一般のコンセンサス」の構築を目指して,地学教育を普及させることが大事だと述べている.

なお,羽鳥先生ご逝去後の今年1月12日に発生したハイチ地震は, 関東大震災やスマトラ大地震を上回る23万人以上の死者を出しただけでなく,上の文中の「奴隷制」が21世紀の現代社会に実質的に残存していることを,図らずも世界に(さら)け出してしまった.彼らはレスタヴェク(同居人)と呼ばれる少年少女で,我々が支払う学会費程度の金額で売買されている.Skinner (2008)によれば,奴隷は「詐欺や暴力により正当な賃金を与えられず強制的に働かされる人」と定義され,ハイチ,スーダン,ルーマニア,モルドヴァ,インドなどが主な国際的奴隷供給地になっていて,現代は人類史上最も奴隷の数が多い時代だという.日本国憲法は奴隷的拘束・苦役からの自由(第18条)と児童酷使の禁止(第27条)を規定しているが,それらは「不断の努力によって保持しなければならない」ものである(第12条).奴隷の一部は日本にも売られているとのことで(同上書145-146ページ),この問題は我々の身近にも忍び寄っている.

 

 

地球環境問題から地球温暖化問題へ

 羽鳥先生のこの本が出てから4年後の1997年に京都議定書が締結され,二酸化炭素排出削減は世界の先進国の公約となった.京都議定書を批准していないアメリカでは,Gore (2006)が「不都合な真実」を著し,CO2排出削減の世論づくりを大々的に開始した.一方,日本では温暖化CO2犯人説に疑いを持つ人たちの議論が2008年に沸騰した.ここでは,最近約20年間の環境問題に関する一般向けの本を簡単にレビューして,その議論の問題点を指摘する.それらは,

【温暖化問題以前】石 (1988)

【温暖化CO2犯人説賛成】谷山(1991), 羽鳥 (1993), 宇沢 (1995),保田 (1996), 松信 (1998), Gore (2006), 明日香 (2009)

【温暖化CO2犯人説反対】赤祖父 (2008), 丸山 (2008a, b)

などである.

今から22年前の石(1988)には,生態系の崩壊(崩壊ベルト地帯,人口爆発),ガン化する都市(メキシコ市,カルカッタ),人口の大移動(ジャワ,アマゾン,エチオピア),消える熱帯林,失われる大地(ナイジェリアの土壌流失,中国の砂漠化),増える災害(干ばつ,洪水),忍び寄る飢餓(農業戦争),汚される地球(北極スモッグ,白熊のPCB汚染,有機塩素,有機スズ,アスベスト,鉛中毒で滅んだローマ帝国,酸性雨),売り渡される汚染(公害輸出,農薬,薬害)などが扱われているが,「地球温暖化」というキーワードは登場しない.谷山(1991)は「大気汚染および気候変動に関する環境大臣会議」がオランダで開かれノールドヴィーク(Noordwijk)宣言が出された1989(平成元)年を「地球環境元年」としている.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最初の報告書が1991年に出たことを考えると,羽鳥先生は最新の情報を取り入れて講義に組み込んでいたことがわかる.

 

第1表 地球型惑星の平衡温度(大気がない場合の平均地表温度)と大気下層の

実平均温度(羽鳥, 1993).

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                             金星               地球               火星

太陽への距離(地球を1)        0.7                 1                  1.6

受熱量( 〃 )              1.9                 1                  0.4

惑星の質量( 〃 )          0.82                1                  0.1

平衡温度(℃)*              50             −25             −60

実平均温度(℃)*           450                  15             −55

 

*これらの数値は教科書によってかなり異なる.例えば金星の平衡温度は−50〜+50℃,

実平均温度には440490℃程度の幅があり,火星の実平均温度には−65〜+23

程度の幅がある.地球の平衡温度も−25〜−18℃の幅がある(例えば,松信 1998).

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第2図. 最近約120年間(18902006)の地球平均気温(a)と石炭・石油・天然ガスなどの年間総CO2排出量(b)の変化.気温は19712000年の平均値をゼロとしてある(国立天文台編 2008; p.902, 979).気温は直線的に上昇しているが,排出量は指数関数的に増加している.1910年頃と1970年頃の寒冷期や1885年頃と1945年頃の温暖期も排出量の変化と相関しない.

 

地球温暖化問題についての疑問

 「資源と環境」の最初の表(第1表)には,金星,地球,火星の大気の温室効果の違いがよく表現されている.つまり,大気が薄い(地表で0.006気圧)火星の地表気温は平衡温度より5℃高いだけだが,地球(地表で1気圧)では40℃も高く,最も大気が厚い金星(地表で90気圧)では400℃も高くなっていて,これは大気の温室効果によるということである.しかし,よく考えてみると,火星と金星の大気は最も効率的な温室効果ガスの一つであるCO295%以上を占めるが,地球の大気のCO2濃度は現時点でわずかに370 ppm0.037%)程度である.つまり,大気のCO2分圧を比べると,火星大気が0.006気圧であるのに対し,地球大気は0.00037気圧であって,火星大気の方が16倍も大きい.もしCO2の温室効果が,現在喧伝されているほど大きいのであれば,火星の気温はもっと高いはずである.CO2が極端に少ない地球大気が,大きな温室効果を発揮しているのは,大気中に水蒸気が多量に(3%程度)含まれているためである.最近の地学教科書でも,「温室効果を起こしている大気の成分は,おもに対流圏に含まれている水蒸気とCO2である」と明記されている(小島ほか2002).CO2が増えれば地球が温暖化する,というのは,湖に小便をすると湖の温度が上がるという議論に似ていて,間違いとは言えないが,現象の本質を量的にきちんと捉えた議論ではないように思う. 1800年頃(「小氷河期」の終わり)から200年以上にわたって地球の平均気温が上昇傾向にあることは疑いないが,これは人類によるCO2の排出が主な原因ではなく,(太陽活動の活発化,大気中の水蒸気量の増加など複合的な原因による)自然変動であるという見方が正しいように思う.赤祖父(2008)は,人為起源CO2による温室効果が1900年以後の温暖化(0.6℃程度)に与えた影響は実際の温度上昇の約1/6で,残りの5/6は自然変動であると結論している.

 

第3図. 過去40万年間の大気中のCO2量の変化(明日香 2009, p. 24).南極中部のボストーク基地で掘削された氷コア中に閉じ込められていた空気の解析による値に最近の大気中のCO2実測値を加えてある.縦軸の単位は体積百万分率(ppmv)

 

 地球温暖化CO2犯人説の主な根拠は,(1)人類が化石燃料の大量消費を始めた1900年頃から大気中のCO2濃度と気温の上昇が顕著になった(第2図),(2)現在のCO2濃度は過去40万年間のどの間氷期(温暖期)にもなかったほど高く(第3図),このようなことは自然変動だけでは起こり得ない,ということである.しかし,(1)については,実は1800年頃から上昇傾向が顕著なことや,19401970年の間はCO2が増加していたのに気温は寒冷化していたことを思い起こす必要がある.羽鳥先生も著者の一人である1968年発行の高校地学の教科書(私たちが高校生の時に使ったもの)には,「20世紀にはいってから,世界の気候は温暖化したため,極地方の氷の状態がかわり,氷河が後退した.しかし,1940年代のおわりころから…(略)…世界の平均気温は逆に下降して,極地方の氷も増しはじめている」と明記されている(湊ほか1968).(2)については,過去数千年間を見ても現在より暖かかった時期が何度もあり(第4図),過去40万年間を見ても同様であって(赤祖父 2008),もしそうなら,むしろ(2)はCO2が地球温暖化の主な原因ではないという逆の証明になってしまう.一般論として,2つの量(この場合CO2濃度と気温)の間に顕著な相関があったとしても,必ず両者の間に因果関係があるとは限らないし,因果関係がある場合でも,どちらが原因でどちらが結果であるかは,よく考えるべき問題である.

 

第4図. 過去約3000年間の海水面温度(気温に近い)の変化.北大西洋の海底堆積物の酸素同位体比(δ18O)から推定.紀元前1000年頃,紀元前500年頃,紀元後1000年頃(「中世温暖期」)に現在より温暖な時期があり,2006年の温度はほぼ3000年間の平均値に近い(赤祖父 2008p. 90).

 

 2010年に入ってから新聞に載った温暖化関係の記事を見ると,IPCCの作業部会でアジア編を担当した教授が,政策決定者に衝撃を与え速やかな対応を促すために,山岳氷河の消失予想年を早めて報告したことを白状したという話(126日付朝日新聞)や,21世紀に入ってからCO2は増加しているのに地球温暖化の傾向が鈍り,横ばい傾向になっているのは,成層圏の水蒸気が減少したためであるという分析結果を米国の海洋大気局のグループが科学誌に発表しIPCCの温暖化予測に疑問が出ているという話(130日付朝日新聞)など,IPCC報告に批判的な記事が多くなっている.Gore (2006)は,地球温暖化CO2原因説を疑う学術論文の数はゼロだが,マスコミの記事では53%が疑っているというデータを示している.しかし,2008年の日本地球惑星科学連合大会ではCO2原因説を疑う科学者を中心とする討論が3日間にわたって行われ,政治家を交えた特別シンポジウムも行われた(日本地惑連合2008; 丸山 2008b).我々はIPCCの見解を鵜呑みにするのでなく,自分自身で考える必要があるが,ノルウェー在住の研究者に,「日本で本屋を覗いたら,温暖化を論じた本の帯に,『ウソ』だとか『ワナ』だとかいう言葉が躍っていて,日本の科学書は週刊誌並みに扇動的になったのかと驚きました…(略)…頭を冷やして議論したいものです」(太田 2009)と言われないように,科学者としての品位と節度をもって議論する必要がある.

 

 

結論1.地球温暖化問題について

1990年前後の議論と最近数年間の議論を比べると,地球環境問題が地球温暖化問題にすり変わってしまい,CO2原因派も反対派も,ともに深刻な環境汚染,資源の枯渇,そして貧困と戦争(+奴隷制)の問題から人々の目をそらす役割をしているように思う.たとえCO2削減に成功して(運よく)温暖化が止まったとしても,これらの問題はそれだけでは解決しない.逆に,近い将来寒冷化するのだから,CO2を削減してエネルギーの無駄使いをやめる必要はないという議論にもならない.「北の国々では25年間無為に待っていることはできず,今起こっている温暖化を何とかしなくてはならない」(太田 2009)からである.Gore (2006)CO2排出削減に反対する一人の政治家の名を挙げて,「石油業界の手先」として糾弾しているが,CO2と温暖化の関係について疑いをもつ人がすべて「石油業界の手先」にされてしまうのは怖い.だが,羽鳥先生がおっしゃるように,「環境問題の基本は科学技術ではなく政治と経済にある」のであって,飢餓と殺戮の21世紀にしないためには,大量消費文明の反省の上に,人類全体の継続的な生存を保障する政策を立案する必要があり,そのために地学研究者は積極的に(しかも品位をもって)発言していかなくてはならない.また地学教育に携わる者は,羽鳥先生が「資源と環境」で強調している「ケチ」や「もったいない」を美徳とする倫理を教育に組み込み,自らもそれを実践して,環境教育をしっかり行うことが必要だと思う.

 

 

結論2.地学教育について

 214日の「羽鳥さんに学ぶ会」で,羽鳥先生が地学の教科書作成に関与した時に「地学教育の柱は時間・空間・連関だ」と言っていたというお話があった.「時間・空間」を地学の教科内容構成の柱とするという主張が羽鳥先生のオリジナルであったかどうかはわからないが,先生の高校地学の授業構成は確かに現在から過去へ,身近な場所から日本全体,世界全体,そして宇宙へという構成になっていた(羽鳥 2004; 4章).先生はその後,ここで紹介した「資源と環境」,そして「地盤災害 地質学者の覚え書き」(羽鳥 2009)を出版され,「人類進化論」の視点から「資源,環境,防災」をキーワードとする「連関」を完成されたのだと思う.我々は,先生が生涯をかけて構築された,時間・空間を縦軸,資源・環境・防災を横軸として螺旋形に進行するすばらしい地学教育の体系を基礎として,人類の将来にとって不可欠な地学教育を,更に発展させていかなくてはならない.

 

追記

 小論を脱稿した後に,地学雑誌の119巻3号(2010)が届いた.これは「グローバル気候変動(Part 3)」特集号であり,小論に関連する興味深い論文が,編集者による序論を含めて12編掲載されている.それらの中で特に大村纂「観測時代の氷河・氷床の質量収支と気候変化について」(北半球の1920年以後の氷河・氷床の収支の変動は全天太陽放射の実測値の増減とよく対応する),宮原ひろ子「過去1200年間における太陽活動および宇宙線変動と気候変動との関わり」(太陽活動の様々な周期の変化によって地球に入射する宇宙線量が変動し気候に影響する),片岡龍峰「宇宙線と雲形成−フォーブッシュ現象で雲は減るか?−」(太陽フレアによる強い磁場が一 時的に邪魔をして地球に入射する宇宙線が減少し,数日間で回復する現象で,その時期に地球の雲の総量は減る),鈴木力英「クライメート・ゲート事件」(第4次IPCC評価報告書の主執筆者の一人が故意にデータ操作を行ったとする疑惑(2009年末に問題化)を否定)は専門外の者にもわかりやすい.2007年6号のPart I,2008年6号のPart IIを含め,小論で扱った普及書の議論から学問的な議論への橋渡しとして好適な論文集だと思うのでここに追記する.

 

文献

赤祖父俊一 (2008) 正しく知る地球温暖化 誤った地球温暖化論に惑わされないために.誠文堂新光社,183p

明日香壽川 (2009) 地球温暖化 ほぼすべての質問に答えます!岩波ブックレット760,岩波書店,87p.

Gore, Al (2006) An Inconvenient Truth 不都合な真実.和訳2007.ランダムハウス講談社,208p

羽鳥謙三 (1993) 資源と環境.共愛女子短期大学公開講座「地球環境と地域社会」,煥呼堂,135-199.

羽鳥謙三 (2004) ロームと四紀ことはじめ―研究と教育のはざまで―.地学教育と科学運動, 特集号,地学団体研究会,90p

羽鳥謙三 (2009) 地盤災害 地質学者の覚え書き.之潮,238p

樋口 雄 (2009) 羽鳥謙三会員のご逝去を悼む.地質学史懇話会会報, 33, 50.

保田仁資 (1996) やさしい環境科学.化学同人,182p

石 弘之 (1988) 地球環境報告.岩波新書,岩波書店,258p

石渡 明 (2009) 名誉会員 羽鳥謙三先生を偲ぶ.日本地質学会News12(11), 15.

小島丈兒ほか (2002) 高等学校地学IB.第一学習社,320p

国立天文台編 (2008) 理科年表.丸善,1034p

丸山茂徳 (2008a) 『地球温暖化』論に騙されるな!.講談社,188p

丸山茂徳 (2008b) 科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている.宝島社新書,191p

松信八十男 (1998) 地球環境論入門.サイエンス社,207p

湊 正雄ほか (1968) 地学 改訂版.実教出版,196p

日本地球惑星科学連合大会(2008) 予稿集(CD-ROM).「特別シンポジウム 世界の気候変動と21世紀の国策」(要旨なし).「21世紀は温暖化なのか,寒冷化なのか?」(J235,要旨あり)

大澤 進 (2009) 羽鳥謙三会員を偲ぶ.そくほう,650, 7.(地学団体研究会)

太田昌秀 (2009) 私の北極.日本地質学会国際賞記念講演.日本地質学会News, 12(10), 32-35.

Skinner, B. E. (2008) A crime so monstrous: Face to face with modern-day slavery. Free Press, Simon & Schuster Inc., 328p.

谷山鉄郎 (1991) 地球環境保全概論.東京大学出版会,181p

宇沢弘文 (1995) 地球温暖化を考える.岩波新書,岩波書店,212p

 


 

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2012年08月03日作成 2012年08月03日更新