地震の前兆の可能性がある自然現象

 

東北大学東北アジア研究センター 石渡 明

[東北大学東北アジア研究センター] [石渡ページ] [東北大学防災科学研究拠点]

[東北大学理学部地球惑星物質科学科・大学院理学研究科地学専攻] 


 

この文章は [地震前兆現象アンケートのお願い] の説明文です [この文章のPDF]

 

[追記1 明治と昭和の三陸地震津波の前兆] [追記2 2011年東日本大震災の前兆?]
 

[追記3 2011年東日本大震災の前兆アンケート中間まとめ(7月13日)]

 

[墓石転倒率] [福島原発事故後の仙台の放射線量] [アンケート最終まとめ]

 


 

1.前震

 大きな地震の数日〜数カ月前(短期前震)または数カ月〜数年前(長期前震)に,本震の震源周辺の地域で小さな地震が頻発することがある.例としては,1872年の浜田地震の際,島根県東部では本震の発生4, 5日前から西方に鳴動が聞こえ,地震を感じた.当日も11時頃に微震が3回あり,16時頃と17時頃にも地震があって,17時過ぎに本震が来た.また,1930年の北伊豆地震では,その年の3月をピークとして2月〜5月に伊東沖で3000回以上の有感地震を含む群発地震があったが,その後も完全には収束せず,11月中旬になってまた頻発するようになった.1125日には東京でも揺れを感じる地震が3回あり,翌26日に本震が来た.

 実際上は,12回の前震があっても,大地震が来る前にそれを前震と判断するのは不可能であり,群発地震も大きな地震に至らずに収束することが多いので,これらを根拠にして大地震を予報することはできない.ただし,とにかく小さな地震を感じたら,大きな地震に対する身の回りの備えを確認する習慣をつけるのは賢明だろう.また,大地震の後は,1ヵ月程度にわたって必ず余震が続き,地域によっては,本震よりも余震の方が大きな揺れになることがあるので,余震域やその周辺地域では,本震による被害が少なかった場所でも,これを前震と考えて,大きな余震への対策を準備すべきである.イタリアで300人が死亡した2009年のL’Aquila地震では,群発地震が続いていたのに当局が「安全宣言」を出したことが,その後に起きた本震の被害を大きくした,として裁判沙汰になっている(この件の参考資料).

2.鳴動(地鳴り)

 上の浜田地震の例のように,前震に伴って鳴動(地鳴り)が聞こえることがある.1854年の伊賀地震では本震の3日前から鳴動が始まり,2日前にはかなり強い前震が2回あって鳴動が盛んになり,27回の小地震があった.前日には午後2時頃に強い地震を1回感じただけで,比較的静かになったが,当日の午前2時に本震が来た.なお,地震の直前(数秒〜数十秒前)に聞こえる地鳴りは,本震の大きな揺れ(S波)が来る前に到着する初期微動(P波)による音だろう.

3.地盤の隆起・沈降またはそれらの傾向の変化

 1964年の新潟地震の震源(粟島付近)に面する日本海沿岸地域では,1940年頃から隆起が顕著になり,1960年には1900年と比べた隆起量が最大16 cmに達したが,1962年には隆起が止まり,1964年の地震の際に一挙に1020 cm沈降した.一方,新潟市付近では1900年以後ゆるやかな沈降が続いていたが,1955年頃から隆起に転じ,1962年頃にはその隆起も停止して,1964年の地震では数cm沈降した.地震の数年前から隆起・沈降の長期的な傾向が大きく乱されていたことがわかる.関東大地震についても,三浦半島三崎の地盤は,1900年の観測開始以来,年1 cmの割合で沈降していたが,1921年から逆に年3 cmの割合で隆起するようになり,1923年の大地震で1.4 mほど隆起した.

4.海面の変動(潮が引くなど)

 日本海は干満の差が少ない(数cm程度)ので,漁業者や住民が地震前後の地盤の上下変動に気がつく場合があった.例えば,1927年の丹後地震では,3718:28の地震発生の数時間前に,今まで表れたことのない岩が海面上に露出していた.この隆起量は1m程度と考えられる.この一時的隆起は,地震で出現した郷村断層の東側の地域で顕著だったが,地震後はもとに戻った.しかし断層の西側の地域では地震によって80 cm程度隆起し,その後もとにもどっていない.このような地震直前の隆起現象は1793年の西津軽地震,1802年の佐渡地震,1872年の浜田地震でも記録されている.2007年の能登半島地震では,門前を通る断層の南側の海岸が地震後に50 cm程度隆起したが,地震の直前に隆起・沈降があったかどうかはわからない.

5.井戸水や温泉の混濁,枯渇,異常湧出,温度変化,化学組成変化など

 1943年の鳥取地震は,34日と5日,そして910日に発生した.鳥取市の吉方温泉では3419:40の地震の30分前に,無色の湯が米汁のように白濁し,湧出量が平常の1.5倍になったが,温度は大差なかった.また,9月の地震のときは,特に変化はなかった.吉岡温泉では,3月,9月の地震の前日に,無色から濃い米汁のように白濁し,浴槽内で自分の足が見えないほどであった.1961年から71年まで続いた長野県の松代群発地震では多量の地下水が湧出し,これによって多くの地すべりが発生した.1995年の阪神大震災では,地震の数カ月前から六甲山地で地下水の湧出量の増加や化学組成(塩素の量など)の異常な変化が見られた.また,地下水や大気中に含まれる放射性元素であるラドンの量が,阪神大震災の8日前に著しく増加した.ラドンは岩石中のウランやトリウムの放射壊変で生成する気体で,地下水とともに移動すると考えられる.ただし,地下水の量や化学組成の変化が必ず地震発生と結び付くわけではない.

6.石油の滲出

 秋田平野などの油田地帯では,地震の前後に石油がしみ出してくることがある.1810年の男鹿地震では,10日前から前震が頻発した他に,1ヶ月ほど前から,八郎潟の湖底に石油が滲出したらしく,湖水の色が赤や黒に変化し,魚が大量死したという記録がある.1939年の男鹿地震でも,地震の前日に八郎潟でフナやコイが岸の近くに押し寄せて,多数捕獲され,一部の場所では手捕りができるほどだったという.ただし,地震の当日には来なくなった.また,海岸では地震の前日の午後から当日の午前(地震発生は14:58)に多数のイイダコが酔ったような状態で砂浜にはい上がってきた.これらも石油の滲出によるのかもしれない.また,天然ガスの噴出によって臭いを感じたり,ガスが燃焼して「火の玉」が飛んだりすることもあるらしい.

7.ナマズなどの生態異常

 上の男鹿地震の例は,地震の前日〜当日に魚類やタコに異常な行動が見られたことを示している.1923年の関東大地震の前日に湘南の鵠沼海岸の池で,投げ網を用いて30 cm大のナマズをバケツ3杯分ほど漁獲した人がいた.ナマズは,昼間は池の底に潜んでいるはずなのに,泳ぎ回っていて容易に捕獲されたことは,地震の前兆の何らかの刺激による異常行動かもしれない.関東大地震の直前に,向島の料亭において,池の水面から頻繁に小魚が跳び上がるのを見て,店の者に何という魚か聞いたところ,ナマズの幼魚で23日前からこのように跳ね上がっていて不思議なことだと答えたという.その他,犬,猫,鳥など様々な動物について,大地震の前に落ち着きをなくす,異常な鳴き声を出すなどの変化を示すことが報告されている.

8.発光現象(光りもの)

 地震に伴う顕著な発光現象が,科学者を含む多くの人によって観察されたのは,1930年の北伊豆地震(「前震」の項を参照)である.伊東で観測していた地震研究者が未明の地震に際し箱根方面(この地震で活動した丹那断層の北方延長)に顕著な発光現象を観察した.他にも多数の人が光を目撃したが,この現象が発生した時刻は,地震の前というよりも,地震と同時だったらしい.この地震に伴う発光現象については,武者金吉氏や寺田寅彦氏の研究論文がある. 1751年の越後高田の地震では,夕暮れから海に出た名立の漁師が沖でボラやカレイを釣っていたが,名立の村の方向が一面に赤くなり,火事だと思って急いで帰ったところ,何事もなかった.しかし,夜半過ぎになって大地震が起こり,裏山が崩れて海になだれ込んだため,名立の村は全滅した(これは海を漂流していて救助された村の主婦の話).つまり,この時の赤い光は,地震の数時間前に発生したことになる.ただし,このような光は微弱であり,昼間は見えないだろう.

9.火山の噴火

 地震活動と火山活動の関連を示す事例は多々ある.例えば,平安時代の869年の貞観三陸地震,878年の元慶関東地震,887年の仁和関西地震に先だって,864年から866年に富士山が大噴火し,青木ヶ原溶岩を噴出した例がある.しかし,いつも富士山の噴火が地震に先行するわけではなく,1703年の江戸地震,1707年の東海・南海地震(1028日)の場合は,その直後(17071216日)に富士山が噴火した(宝永噴火).そして,1854年の東海・南海地震,194446年の東南海・南海地震の際には,富士山は噴火しなかった.歴史上初の木曽御嶽の噴火(1979年)の5年後(1984年)に直近で長野県西部地震が発生したことも,それらの関連を示唆する.

10.電磁気異常

多くの人が電波を利用するようになったのは1950年代以後なので,それ以前の地震についての電磁気異常の報告は少ない(1855年の江戸地震における「地震の直前に磁石についていた鉄が落ちた」などの報告は疑わしい).1995117日の阪神淡路大震災では,地震の2週間程度前から数時間前にかけて,ラジオやテレビの雑音,リモコンや携帯電話などの動作異常があったという多数の報告が,地震の後でなされている.同様なラジオの雑音などは,1970年代に中国で起きたいくつかの大地震の前にもあったことが報告されている.兵庫県立西はりま天文台(佐用町)では阪神淡路大震災の4020分前と地震発生から45分間,地表からと思われる異常な電波放射を観測しているが,中国でもレーダーが地震の前に擾乱を受けたことが報告されている.

【参考文献】

1.財団法人震災予防協会・那須信次編(1977)「大地震の前兆に関する資料 

今村明恒博士遺稿」 古今書院.

2.安徽省地震局編,力武常次監修,杉充胤訳 (1979)「宏観異常と地震」 

共立科学ブックス,共立出版.

3.蒋凡編著,力武常次監修,杉充胤訳 (1979)「海城地震 予知成功の

レポート」共立科学ブックス.共立出版.

4.弘原海清編(1995)「阪神淡路大震災1995117日午前546分 

前兆証言1519!」 東京出版.

5.角皆潤・脇田宏(19951995年兵庫県南部地震前の地下水の化学組成の変化.

月刊地球,号外, 13, 190-193.

 

【追記1】明治と昭和の三陸地震津波の前兆現象について

 

明治291896)年615日と昭和81933)年33日の三陸地震津波の前兆現象

1.井戸水の枯渇,混濁(前日から)

2.イワシ・マグロ・ウナギ・アワビなどの豊漁(数カ月前〜数日前).

3.大砲を打つような音(津波の直前)

4.海面上の発光(津波の直前.ただしどちらも津波は夜間に来襲)

吉村 昭「三陸海岸大津波」(文春文庫, 2004年)に基づく

 

【追記2】2011年東日本大震災の前兆の可能性について(アンケート開始前までに集めた情報)

 

今回の201131114:46の地震の前兆の可能性がある現象について

1.短期的な前震 2日前の3911:45に宮城県はるか沖でM7.2の地震があった.

宮城北部で震度5強.大船渡で60 cm,石巻で50 cmの津波.緊急地震速報は不発.

2.長期的な前震と関連地震

2003.05.26. 宮城県沖地震M7.1,   2003.07.26. 宮城県北部地震M6.4

2005.08.16. 宮城県沖地震M7.2,   2008.06.14. 岩手宮城内陸地震M7.2

2008.07.24. 岩手県沿岸北部地震M6.8

3.気になる関連地震

2010.11.30. 小笠原諸島西方沖,深さ480 kmM6.9,東北地方の広い範囲で震度3

2010.12.22. 小笠原父島の東北東130 km, 深さ10 km, M7.4, 父島・母島で震度4

八丈島で津波60 cm

2011.01.13. 小笠原諸島西方沖,深さ520 km, M6.6,震度は父島・母島2, 東北地方1

2011.01.31. 東伊豆で震度4の地震.震源は伊豆大島近海の浅所.

2011.02.22. ニュージーランドのクライストチャーチでM6.3の地震.33日現在

死者161, 不明約60,日本人留学生28人が死亡または不明.前年9月にも.

  2011.03.10. 中国雲南省でM5.8の地震.死者24,負傷207.

4.火山・地熱・温泉

福島県の安達太良火山の沼ノ平火口では1996年から泥熱水噴出,1997年に有毒火山ガスにより登山者4人死亡.2000年と2010年にも噴気が活発化.現在も水蒸気噴出続くが3/11の地震による変化はない.福島県の吾妻山は2009年から噴気活動が活発になっているが,3/11の地震後は夜間に火口付近が明るくなる現象が見られるようになった.20101017日,宮城県鬼首火山の地熱発電所で地中から水蒸気と熱水が噴出し1人死亡,1人負傷.秋田駒ヶ岳では2009年から201012月にかけて地熱域拡大.岩手山と秋田駒ケ岳では3/11の地震後しばらく火山性地震の回数が増加.このように東北地方のいくつかの火山で3/11の地震の2年前くらいから地震後にかけて火山活動の活発化が見られる(気象庁の火山情報や新聞報道に基づく).また,2011126日から霧島火山の新燃岳が噴火開始,189年ぶりに溶岩ドーム出現.2月中旬には鹿児島の桜島も活動が活発化.

5.海洋生物関係(地元紙の新聞記事に基づく):

2010.12.07 仙台港にクジラが迷い込む.その後発見できず.松島水族館によると仙台

湾周辺では年に数件クジラの目撃例がある.

2010.12.22 サンマ棒受網漁終了.前年と比べ女川港58%,気仙沼港77%と不漁.

2011.01.10 秋サケ漁終了(南三陸町).海水温が高い状態が続いたため不漁(前年の

5357%).河川に上ってくるサケも不漁.山形県も2010年は過去最低の不漁.

2011.01.14. 七北田川河口にクジラが迷い込む.29日現在松島水族館に移して治療中.

  2011.02.23. 牡鹿半島で天然ヒジキ刈り取り解禁.収穫は去年の倍以上,品質もよい.

 

【追記3】2011年東日本大震災地震津波前兆アンケート中間まとめ(1)

 

東日本大震災の前兆現象に関するアンケート回答(※)とネット上及び新聞紙上(地震後)の情報のまとめ

2011713日現在) (7月15日追記)

 

1.前震や地震活動の変化など

39日(本震の2日前)から地震活動が顕著に活発化(ユーチューブなどに動画)

東日本大震災の前兆すべり観測できず(地震予知連絡会)(426日,朝日新聞)

22年前から震源域で地震が静穏化.北海道大地震火山研究観測センターの勝俣啓准教授の研究(産経新聞616日)

 

2.その他の自然現象など

2月17日昼の12:02 地震雲? 山形県山形市から太平洋の方向へ直線的に伸びる帯状の幅の広い雲?が2列見えた(ユーチューブ動画)▲

228日午前4時頃 UFO?  光る物体を見た.左右に動いてすぐ消えた(場所不明) (ネット上)

38日午後5時頃,神奈川県で車から見た沈む夕日が,虹に取り囲まれたような,見たこともない太陽だった.(この夕日と思われる写真が複数のページに掲載されている) (ネット上)

310日夜  発光現象 岬の先で光の柱が空に伸びた(宮城県南三陸町,423日の毎日新聞)

3月11日午前8時頃 宮城県塩釜市の御釜神社で,鉄製の「神釜」の水が普段と異なり澄んでいた.4台の釜のうち,奥の2台で,いつもはごみやサビで赤褐色に濁る水が澄んでいた(女性管理人の話.4月23日毎日新聞)

 

3.陸上・陸水生物関係

1月 八戸市内の五戸川で今年1月に大量のなまずが獲れた(東奥日報324日)※

210日頃から ? 陸前高田市では約1ヶ月前から、朝夕、カラスの群れが空を覆い、市民の間でちょっとした話題になっていた ※

数日前から カラスが消えた(宮城県南三陸町,毎日新聞4月23日)

311日午前1:50頃 宮城県石巻市湊地区の公園でカラス50羽ほどが騒いでいた (読売新聞7月2日)

311日午前10時頃 同地区でトンビが数10羽飛びながら鳴き騒いでいた(以上2件,読売新聞72日)

311日昼頃,宮城県でカラスの大群が鳴きながら移動していた (ネット上)

31113:00頃,千葉県でいつもは地上で餌を探しているカラスが高い建物の上に多数集まっていた (ネット上)

 

4.海洋生物関係

12月頃,紀伊水道周辺でイカの漁獲量が通常の数倍に(読売新聞5月1日)

34日夜,茨城県鹿嶋市でクジラ50頭が浜に打ち上げられた(54頭説もある.体長23 mのカズハゴンドウらしい)(35日の読売新聞)▼

数日前から? タコが異常に獲れた( 岩手県久慈市),マダラが岸辺に寄らなかった(岩手県野田村)(423日の毎日新聞)

311日午前中 福島県浪江町でアイナメが予想以上に獲れた( ネット上,okwave)

 

5.電磁気関係

356日 東京電気通信大学の早川正士名誉教授 (地震電磁気学),震源域上空の電離層の乱れを観測.(53日の日経新聞)

東日本大震災40分前に、震源地上空の電子急増.北大理学研究院の日置(へき)幸介教授(地球惑星物理学)(328日の北海道新聞)

●これら2件の電磁気異常については,7月15日の読売新聞「気になる!」欄でも詳しく取り上げている.

 

▲地震雲について

 地震雲の写真や地震雲を見たという報告はネット上に沢山あるが,発見の年月日と時刻,継続時間,場所,見えた方向などのデータがはっきりしない場合が多い.地震雲と普通の雲を見分ける基準もあいまいで,写真を見た人から「飛行機雲だ」,「普通の雲だ」などの批判が書き込まれていることが多い.結局その人が地震雲だと思うかどうかが唯一の基準のようである.例えば,空の半分が雲でその境界が直線になっている場合(断層型),筋状や幅広い帯状で直線的に長く伸びる雲,細長い雲が平行に多数並ぶもの,同心円状に並ぶもの,放射状に並ぶもの,弓や鎌(かま)のような弧状の雲,竜巻型,ラセン状,レンズ状など珍しい形の雲,色つきの雲などが地震雲とされやすいようである.他の雲と違って低いところにあるが,風に流されず,しばらく同じ場所にあることを判断基準とする人もいる.

 

▼クジラ・イルカの集団座礁に関して

 この記事は,ニュージーランドでも今年222日のクライストチャーチ地震の2日前にクジラ107頭が浜に打ち上げられたという話と結びつけて,地震の前兆であることを示唆している.しかし,クジラやイルカが浜に打ち上げられる事件は日本だけでも毎年100件以上あり,数10頭以上の群れが座礁することも毎年のようにあるが,その度に大地震が起きるわけではない.例えば,2002年1月26日に鹿児島県大浦町にマッコウクジラ14頭が座礁し,長さ10 m,重さ15トン以上ある大物ばかりだった.同年2月24〜25日には茨城県波ア町の海岸にカズハゴンドウ85頭の群れが座礁した.同町には2001年2月にも約50頭の群れが打ち上げられた.しかし,日本では2001年3月24日の芸予地震から2003年5月26日の宮城県沖地震までの間に大きな地震は起きていない.集団座礁の原因は不明で,集団心理説,社会的自殺説,伝染病説,エサ追い説,天敵説,地磁気説,音響説などいろいろな仮説が考えられている.


 

2011年06月22日作成 2013年10月07日更新

 

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