東北大学 東北アジア研究センター 創設20周年記念式典・国際シンポジウム
東北アジア地域研究の新たなパラダイム

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東北大学東北アジア研究センター創設20周年記念企画国際シンポジウム
東北アジア:地域研究の新たなパラダイム

 
総合セッション
01 東北アジア研究の意義と将来像 岡 洋樹 12月5日 16:45〜17:50 桜
前世紀末の冷戦構造の解体を契機とした地政学的状況の変動は、わが国にとって東北アジア(あるいは北東アジア)研究の重要性をますます高めている。この地域の重要性は、第一にこの地域とわが国の近さに ある。その近さゆえに、この地域が抱える諸課題は、わが国にいやおうなく当事者性を付与するとともに、地域の課題群を包括的に把捉する戦略的かつ巨視的な地域認識枠組みの構築を要求する。そのような認 識枠組みを欠いたところに、この地域に関わる状況への有効な対処は望み得ないであろう。一方で、地域内諸国の交流の深化は、学術分野においても、この地域に対する研究の進展を生み出している。このセッ ションでは、この地域を対象として研究を展開してきた東北大学東北アジア研究センター、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、富山大学極東地域研究センター、島根県立大学北東アジア地域研究セン ターの四つの組織の経験を踏まえて、地域理解の在り方や方法について討論を行いたい。
セッションA:東北アジアの自然環境:自然史
A1 東北アジアの地殻変動―パンサラッサから環太平洋まで 平野 直人 12月6日 9:00‐12:30 小会議室1
パンゲア超大陸が形成されたおよそ2.5億年前、現在の東北アジア地域はパンサラッサ海に面し、以降現在の環太平洋プレート沈み込み帯に至る地殻変動の地であり続けた。本セッションでは、現在に至るまでの東北アジアの地質、岩石、火山を紐解き、モンゴル・オホーツク海形成、太平洋海嶺沈み込み、千島弧衝突など過去の地殻変動を追う。
A2 東北アジア生物多様性の起源 千葉 聡 12月5日 9:00‐12:00 会議室2
日本の生物相の起源を考えるうえで東北アジアはきわめて重要な地域である。特に極東ロシアから中国東北、モンゴルに至る地域の生物相は、比較的高緯度に位置するにもかかわらず、非常に高い種多様性と固有性を有することで知られている。しかし、この地域の生物相は、その多様性の高さや、日本の生物相との密接なつながりにもかかわらず、その形成過程は依然として謎に包まれている。本セッションでは、東北アジアの淡水域と陸域の生物相に注目し、その形成過程について最近の研究事例を紹介し、その多様性の起源に迫る。また、そのユニークな生物相が、進化生物学や生態学の一般的な仮説を検証するうえで、すぐれたモデル系となりうることを示す。さらに本地域の生物相と日本の生物相の関係について理解を深めることにより、日本の生物相の形成過程に本地域の生物相がどのような役割を果たしたかを明らかにする。
A3 東北アジアの人類誌と環境適応 高倉 浩樹 12月5日 9:00‐13:00 小会議室7
人類文化史の観点からみれば、シベリア・モンゴル・中国東北部を中心とする東北アジアは、ステップの牧畜とタイガ・ツンドラ・海岸部の狩猟採集という環境適応が形成された地域である。しかし、よりミクロな観点からは、狩猟・漁労・牧畜・農耕が様々な形で複合して生業と社会組織を形作ってきた。本セッションでは、考古学及び民族誌的に観察しうる局所的な自然環境のなかで展開した個別の生業複合に着目し、これを進化と適応という観点から分析することで、ミクロ環境のなかで人類集団が発揮しうる自然の利用・改変・保全の特質を明らかにする。とりわけ気候変動や災害といった自然環境の攪乱の局面や、歴史上みられる帝国的な国家との関係に着目することで、個々の社会組織にみられる環境適応の柔軟性と脆弱性を明らかにする。このことを通して、現在の国境や言語文化史的な観点をこえた東北アジアの環境と社会の関係を総合的に扱う視座について検討する。
セッションB:東北アジアの社会環境:越境
B1 個人史からみる東北アジアの人の移動―マルチサイトな人類学の挑戦 瀬川 昌久 12月6日 9:00‐12:30 小会議室7
現代の東北アジアにおける人の移動を、個人のライフヒストリーの視点から微視的に検討することを通じ、フォーマルな政治経済事象のみには還元できない移民の動機や心性に肉薄する。それは故郷、経由地、移住先といった複数の地点を調査地点とする「マルチサイト」な研究方法においても、文化人類学の新たな可能性を拓く試みである。
B2 近現代における東アジアの移住者の生活実践―マルチサイトな人類学の挑戦II 李 仁子 12月6日 13:30‐17:00 小会議室7
フォーマルなデータやマクロなアプローチでは、東北アジア内における移住民は存在感が薄く、偏った解釈をされがちであった。しかし、多様な背景を持つ彼らは不慣れな時間と空間の中で自らの生活実践を切りひらき、既存のものとは異なる文化的な創造や独自性の発揮を成し遂げてきた。このセッションでは、近現代において東アジアから日本へ、あるいは日本から東アジアへ移動し、長く暮らした移住民たちの個々の生活実践をつぶさに検討する。そして、彼らが直面した移住先の場や歴史的な時間の中で自らの営みをどのように創り出し、再生産し、伝承してきたのかを跡付けつつ、同時に彼らが残したモノが時間の流れとともにどのように再解釈されてきたのかを論じたい。
B3 東アジアの環境問題をめぐる国際協力:その到達点と課題、そして未来 石井 敦・
明日香 壽川
12月6日 13:30‐17:00 小会議室1
近年、PM2.5の大気汚染に注目が集まっている。そして、健康影響――発がん性、喘息などの呼吸器疾患、心不全などの循環器系疾患など――が、懸念されている。日本のPM2.5の議論には、新しい越境大気汚染問題として扱うべきPM2.5の対外政策を、変動しつつある東アジアの国際関係の中に具体的課題としてどう組み込んでいくかという戦略が欠落している。先日、日中韓でPM2.5の共同観測が合意の見通しであることが報道されたが、共同観測をどのように東アジアの国際関係の中でPM2.5対策に結びつけていくのかという環境外交としての戦略がないのである。2014年7月の中韓首脳会談および11月のAPEC(北京)開催後の米中首脳会談ともにその成果が環境協力であったという事実は、東アジアにおける緊張緩和のための重要な課題として同地域における環境協力案件が選ばれる可能性が大きいということを示唆している。また、日中間の「戦略的互恵」関係の具体的な発展形が、新しい形の環境協力になる可能性も大きい。となれば、東アジア地域における環境協力について、その理念および外交上の位置づけも含めて日本の関与のあり方を明確にしておくことが、きわめて重要となる。本セッションでは日中韓の専門家が一同に会し、現在までの大気汚染に取り組む国際協力を整理・評価した上で、共通認識が醸成されているところはどこなのかを確認しながら、今後、日中韓が地域の安定と大気汚染の解決に向けてどのような国際協力を展開するべきなのかを模索する。
B4 モンゴル史及び東北アジア史における大清国の歴史的位置 岡 洋樹 12月6日 13:00‐17:00 小会議室3
17世紀に成立した大清国は、歴代中国王朝を悩ませ続けたモンゴル遊牧民の大半に対して、長期のわたる安定的支配を実現した。そこには、大清国独特のモンゴル遊牧民統治体制があった。本セッションでは、大清国のモンゴル遊牧民支配の特質を議論することを通じて、この時期をモンゴル遊牧民史、ひいては東北アジア史の中に位置づけるための議論を行う。
B5 東北アジアにおける戦後秩序の形成 寺山 恭輔
上野 稔弘
12月6日 9:00‐12:30 小会議室3
第二次大戦で敗北した日本は満洲、台湾、朝鮮の植民地を喪失したが、東北アジア地域ではその後の数年でモンゴル独立の国際的承認、国共内戦を経た後の中華人民共和国の成立、朝鮮戦争と朝鮮半島の南北分断の固定化が続き現在に至る戦後秩序が形成された。可能な限り新たな史料を用いて東北アジア地域におけるこの時期の戦後秩序の形成過程を明らかにし、今後のこの地域の平和的発展を展望することが本セッションの目的である。
セッションC:東北アジアにおける遺産の保全と継承
C1 東北アジアの言語資料の電子化利用 栗林 均 12月6日 13:30‐17:00 小会議室6
本セッションでは、東北アジアの諸言語の資料をパソコンおよびインターネットで活用するために、言語資料を電子化し、活用するための方法、およびその事例を検討する。対象とする主な言語と文字は、モンゴル系の伝統的モンゴル文字、パスパ文字、トド(オイラート)文字、キリル文字、および満洲語系の満洲文字、シボ文字等である。文字言語(テキスト)の電子化以外にも、文献資料(画像)および音声資料を電子化し、活用するための方法、およびその事例を検討する。
C2 歴史資料の保全と活用―19世紀日本の村落社会と生命維持 荒武 賢一朗 12月5日 9:00‐13:00 会議室1
19世紀日本における歴史資料は、行政機構による公文書から、庶民が記録したものまで、多様な人々によって作成されている。東北アジアのなかでも、地域社会に伝来する文書が多いことは日本の特徴といえるだろう。このセッションでは、歴史資料の保全に携わってきた研究者が、地域資料をもとに19世紀の社会像を明らかにする。具体的な課題としては、当時の地域社会で実施された人々の生活を維持する方法について考えていきたい。まず、村落社会の運営や自治のあり方、経済的に困窮する人々を救済する体制を確認し、「19世紀日本型村落運営」のモデルを提示したい。そして、医療の実情と、衛生についての社会的通念の変化を明らかにしていく。この2つの事例を複合的に理解し、当時の生命維持について議論を深めたい。これは、歴史学における新しい研究方法を確立することだけでなく、現代社会の諸課題に向き合う論点にもなるであろう。
C3 西シベリアの湿地生態系の食物網と寄生関係 鹿野 秀一 12月6日 9:00‐12:00 小会議室6
ロシア西シベリア中央部に位置するチャニー湖沼群は、広大な浅い内陸湖とその周辺の湿地帯からなっている。この地域における我々の研究プロジェクトは次の2点を目指している。1) チャニー湖沼群の湖や湿地における植物プランクトンや付着藻類などの一次生産者から魚類や鳥類を含む高次消費者までの食物網構造について、生物の炭素・窒素安定同位体比を測定することにより明らかにする。2)近年、寄生虫も食物網に包含することの重要性が指摘されているにもかかわらず、実際の食物網での寄生虫の役割がほとんど研究されていないため、チャニー湖沼群の湿地生態系における食物網に宿主・寄生虫関係を組み込む試みをすることである。
C4 狩野文庫の特徴について―明治の博物学者狩野亨吉の視点 磯部 彰 12月5日 9:00‐12:00 小会議室6
東アジア研究に対して、中国の古典籍は有益な情報の源の一つである。日本には多くの大小さまざまな東アジア典籍関係のコレクションがあるが、東北大学の狩野文庫は質量ともに代表的なものの一つである。狩野文庫は表面的な理解で止まることも多く、実質的な面で知られることは少ない。本セッションでは、三人の講演者から、狩野文庫のいくつかの特徴を紹介したい。
関連企画
S2 ワークショップ・地震災害後の人文学プロジェクトの回顧と研究者の役割の探求 高倉 浩樹 10月24-25日 東北大学東北分室
東日本大震災後、震災復興を目的として大学などの高等研究機関はさまざまな研究プロジェクトを実施した。そのなかで人文学系の分野はどのような研究プロジェクトをおこなったのであろうか。またそれはどのような成果をあげたのであろうか。本ワークショップは、このような問題意識をもつ研究者によって組織される。中核となる関心は、巨大な自然災害に面したときの人文学の役割は何かを探ろうとするものである。2011年の東日本大震災の直前には、2004年インドネシア・スマトラ沖地震や2006年のジャワ中部地震、2008年の中国四川大地震、2011年のニュージーランド地震など多くの震災が発生している。これらの災害に直面した人類学・宗教学・地域研究の研究者の経験を報告し、そこで考え、実施された(あるいはされなかった)研究者の多様な役割の可能性について討議する。人類学や宗教学、地域研究の学術的知の特徴は、現状の社会的文化的過程を深く理解するということにある。一方、土木工学や経済学が得意とする、社会的仕組みを積極的に改善するあるいは全く新しい仕掛けを導入することはこれまで人文学では充分に取り組まれてこなかった。このような人文学のありかたは震災を通して変化したのかしなかったのか、またそれは妥当であるのか否か。このワークショップでは、実際に実施された具体的なプロジェクトに言及しながら、その方法や社会的意義とそして問題点を提示し、人文学研究者が貢献可能な領域について検討していきたい。
D1 Korea‐Japan Joint Conference on Electromagnetic Theory, Electromagnetic Compatibility and Biological Effect(KJJC 2015) 佐藤 源之 11月23日‐24日国際センター白樫1, 2.小会議室8
KJJC2015は電磁界理論、環境電磁工学、電磁界生体影響の学術的分野における情報交換と最新研究の発表の場である。この学術交流において、日本と韓国の研究者の交流推進も合わせて図る。KJJCはおよそ3年毎に開催されている日韓共同会議であり、前回は2012年にソウルで開催された。
S1 電子情報通信学会 地下電磁計測ワークショップ 佐藤 源之 11月26‐27日 片平さくらホール2階
本ワークショップは地中レーダ(GPR) をはじめとする電磁気学的手法による地下計測に関する講演を広く募りますが、今回は「復興・遺跡調査」を小特集テーマとします。東日本大震災に係わる被害状況の把握と、今後の復興活動において、地中レーダの活躍が期待されます。また復興に係わる造成作業での遺跡調査なども必要となります。ただし、発表のテーマはこれに限るものではありません。また併せてGPR チュートリアル(GPR利用に関する初心者向けの講習会:これからGPRを使ってみたい、あるいは既に使い始めているがいろいろな問題を抱えている技術者、研究者、学生を対象にします)を開催します。
 

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