指定国立大学災害科学世界トップレベル研究拠点

東北大学東北アジア研究センター
災害人文学ユニット

Core Research Cluster of Disaster Science

Center for Northeast Asian Studies Disaster Humanities Unit

イベントレポート

2018.09.18
{報告}2017年度第2回災害人文学研究会「災害レリジエンス―子ども、青少年、家族研究からの視点」(2018/3/23 開催)

日時:2018年3月23日(金)13:30〜15:30

場所:東北アジア研究センター 第2セミナー室

主催:東北アジア研究センター災害人文学ユニット

 

第2回災害人文学研究会は、レリジエンス研究の第一人者であるAnn S. Mastenミネソタ大学教授を迎え「災害レリジエンス―子ども、青少年、家族研究からの視点」と題し研究会を実施した。

まずはじめに高倉浩樹東北アジア研究センター長より、指定国立大学災害科学研究拠点の調査研究活動に際し、Masten教授の心理学的なレジリエンス研究に対する期待が示された。

続いてMasten教授から災害レリジエンスに関する研究史が概括された。レジリエンスという概念は1970年代以降、関心が寄せられるようになった概念であるが、環境科学の文脈と結び付けられて論じられるようになったのはつい最近のことであるという。レリジエンスとトラウマを関連させた画期的研究としてしられるRutterの論文(1987)以降、レジリエンスはダイナミックなプロセスとして理解されるとともに、様々な学問領域において援用されるようになったという。それは今や個人の内在的な状態ではなく、諸個人をとりまく様々な外的状況や関係のなかで構築されるきわめて社会―文化的なタームとしてとらえ返されるようになり、歴史や宗教といった観点からアプローチされている。その後、近年の経験的研究からの事例紹介では、トラウマと復興状況、社会関係資本、事前防災や文化、儀礼といった人文学的アプローチの可能性や課題が論じられるとともに、今後の課題と展望が提示された。

最後に行われた質疑応答では、様々なトピックが議論の焦点となった。環境学的定義と人類学的モデルとの関連性と差異、歴史学者としていかなる記憶を残すべきかという規範的問題、capability(アマルティアセン)とcapacityという諸概念の共通性と差異、あらゆる文化の基層にある宗教とレリジエンスとの関係、生きがい・人生の意味づけといった諸問題にかんして人類学や歴史学が貢献できる諸領域、子どもに対するサポートの課題と可能性など。

災害科学という研究領域を掲げるうえで避けて通ることのできないレリジエンスという概念の歴史的変遷やその最新の知見を学ぶとともに、様々な災害を対比・考察するための学際的枠組みについて示唆を得た貴重な機会であったように思う。

報告:福田雄

 

 

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