指定国立大学災害科学世界トップレベル研究拠点

東北大学東北アジア研究センター
災害人文学ユニット

Core Research Cluster of Disaster Science

Center for Northeast Asian Studies Disaster Humanities Unit

イベントレポート

2019.01.28
{報告}第7回災害人文学研究会「ドキュメンタリー映画『ガレキとラジオ』を観る」(2019/1/15 開催)

日時:2019年1月15日(火)18:15〜20:05

場所:東北大学川内北キャンパス講義棟B棟101室

登壇者:山国秀幸(『ガレキとラジオ』エグゼクティブプロデューサー)

山内明美(宮城教育大学社会科教育講座准教授)

主催:東北アジア研究センター

共催:指定国立大学災害科学研究拠点

東北アジア研究センター災害人文学ユニット

 

 

概要:

「ガレキとラジオ」は東日本大震災により大きな被害を受けた宮城県・南三陸町で、防災・避難情報を届ける災害ラジオ局として一年間限定で活動した「FMみなさん」を追ったドキュメンタリー映画である。本作のエグゼクティブプロデューサー・山国秀幸氏と、南三陸町出身で三陸沿岸部の農漁村をフィールドとする宮城教育大学社会科教育講座准教授の山内明美氏を招き、本年度7回目となる災害人文学研究会を開催した。東北大学内外の教員、学生、市民計46人が集まり、映画の上映および意見交換の場がもたれた。

 

「FMみなさん」のスタッフは自らも被災したラジオ未経験の町民ばかりだった。「被災地だからこそ、この町にはもっと笑顔が必要」と町のためにできることを考えたスタッフらは、町民へのインタビュー、子ども達のクリスマスイベント、震災で結婚式をあげられなかった人や思い出の写真を失ってしまった人のための門出の式を次々と企画、町の再生のために動き始めた。震災により多くのものを失いながら前を向き歩み続ける人々の活力をとらえたドキュメンタリーとして今なお、南三陸町内外の人々の心を打つ映画である。

 

 

上映後の意見交換では、まず山国氏から映画が作られたきっかけと登場人物の現在の状況が伝えられた。震災直後から震災にかんする映画が数多く作られると予想し、何十年後も鑑賞され記憶の風化を防ぐ前向きな内容の映画にしたいという製作意図があった。映画の完成後に南三陸町で行った町民向けの上映会は喜ばれたという。

 

南三陸町出身の山内氏は、本作が撮られた時期と比べ現在の町の人々は元気をなくしており、本作により震災直後の風景を町の人たちに思い出してもらいたいと語った。ただ、遺体の写真が映る場面が含まれており、遺族を含む町の人たちが本作を今後鑑賞する上で扱いを検討してほしいと伝えた。

 

 

本作ではナレーターが「死者」として語り、作中では娘と孫が行方不明となった女性の存在が印象的である。死者の存在を映画に登場させたことについて山国氏は、ナレーターが死者を代弁し前向きな思いを語ることで町の人たちに安心をもたらせ、被災地以外の人たちに震災の状況をわかりやすく伝えるため、家族が見つからない女性を登場させたと語った。

 

報告:是恒

 

 

 

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