指定国立大学災害科学世界トップレベル研究拠点

東北大学東北アジア研究センター
災害人文学ユニット

Core Research Cluster of Disaster Science

Center for Northeast Asian Studies Disaster Humanities Unit

イベントレポート

2019.04.01
{報告}第8回災害人文学研究会「ドキュメンタリー映画『おだやかな革命』を観る」(2019/2/5 開催)

日時:2019年2月5日(火)18:15〜20:30

場所:東北大学川内北キャンパス講義棟B棟101室

登壇者:渡辺智史(『おだやかな革命』監督)、土屋範芳(東北大学大学院環境科学研究科研究科長・教授)

主催:東北アジア研究センター

共催:指定国立大学災害科学研究拠点、東北アジア研究センター災害人文学ユニット

 

概要:

「おだやかな革命」は、東日本大震災の原発事故後に福島県で立ち上がった会津電力と飯館電力、岐阜県・秋田県・岡山県の再生可能エネルギーの実践などいくつもの事例を取り上げ、エネルギー自治とこれからの時代の「豊かさ」を問うドキュメンタリー映画である。本作監督の渡辺智史氏と、本学大学院環境科学研究科研究科長・教授の土屋範芳氏を招き、本年度8回目となる災害人文学研究会を開催した。東北大学内外の教員、学生、市民計51人が集まり、映画の上映および意見交換の場がもたれた。

 

渡辺氏は大学在学中からビデオカメラを携え農村に赴き、民俗映像として記録を行っていた。農村の人口減少や高齢化といった課題を知り、「ソーシャルデザインとしての映像制作」として映画を観た人の行動を変え社会課題を解決することに可能性を見出し、映画製作を行っている。過去には山深い温泉郷の一年を追った映画や、地域に固有の在来作物を題材とした映画を製作・発表してきた渡辺氏は、東日本大震災の原発事故を考察し、エネルギー自治をテーマとした本作の製作にとりかかった。エネルギーを象徴とし、自分たちの生き方、経済、環境を自治していくストーリーを描くことを目指したという。

 

 

土屋氏は地質学を専門とし、温泉や地熱を研究、社会へ実装する応用研究を進めてきた。火山や温泉の多い日本は資源としての地熱が豊富であり、資源量は世界第3位でありながら、地熱発電は日本の電力の0.2%しか賄っていない。また、東日本大震災が起きた2011年の3月時点で地熱に関する日本の国家予算はゼロになっていた。原発事故を受けて予算がついたものの、大規模な地熱発電所は今なお整備されておらず、地熱は地域のエネルギーとして日本社会でほとんど認められていないという。土屋氏は、東日本大震災以前の150年間で日本では電力の供給源が大型発電所に集約され、全国一律のネットワークが築かれたが、震災によりそのネットワークの危うさが明るみになったと語った。また、今後はエネルギーの社会システムが変わっていくとの予感から、本作が伝えるエネルギー選択に期待を寄せた。

 

報告:是恒

 

 

 

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