日時:2019年5月17日(金)18:30〜20:55
場所:せんだいメディアテーク スタジオシアター
登壇者:岸善幸(『ラジオ』演出)
菅原睦子(仙台短篇映画祭実行委員)
高橋卓也(山形国際ドキュメンタリー映画祭理事兼プロジェクトマネージャー)
主催:東北アジア研究センター
共催:指定国立大学災害科学研究拠点、東北アジア研究センター災害人文学ユニット
概要:
本研究会の上映作品『ラジオ』は、宮城県女川町で2011年4月~2016年3月まで開局した臨時災害放送局「女川さいがいFM」(現在は「一般社団法人オナガワエフエム」として活動)の実話と同局で活動した高校生アナウンサーのブログにもとづくドラマである。制作はテレビマンユニオンが担当、撮影は女川町内各所でおこなわれ、NHK特集ドラマとして2013年に放送された。フィクションでありながら実話をもとにし、被災者の思いを伝えた内容が高く評価され、平成25年度文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門大賞を受賞している。
本作の演出を担当した岸善幸氏、仙台短篇映画祭実行委員の菅原睦子氏、山形国際ドキュメンタリー映画祭理事兼プロジェクトマネージャーの高橋卓也氏を迎え、本年度1回目となる災害人文学研究会を開催した。東北大学内外の教員、学生、市民計40人が集まり、作品の上映および意見交換の場がもたれた。
岸氏は制作者として、菅原氏と高橋氏は映画を普及させる立場から東日本大震災に向き合ってきた。岸氏はこれまで手がけたテレビ番組を中心とするドキュメンタリーの制作経験から培った演出手法を持ち、本作の撮影・制作を被災地で行った。一般にフィクションとドキュメンタリーは相反するものと考えられがちである。しかし限られた撮影期間ではあったもの、被災地に身を置いた出演者たちの表情の変化、被災地への想いがあらわれた本作には、被災者の心のありようを伝える重要な表現がある。菅原氏は、東日本大震災の影響を受けて開催が危ぶまれた仙台短篇映画祭の実行委員である。同映画祭では、震災後に41名の映画監督に制作を呼びかけたオムニバス作品「311 明日」を発表、映画を通して震災以降の日々と向き合う視座を伝えた。
高橋氏は被災地・石巻で映画の上映ボランティアを行い、かつて一般的だった移動映画のスタイルを復活させ、映画により人が集まりコミュニケーションがうまれる場を作った。また、映像アーカイブに残りにくい震災に関する映画作品を、災害と人が向き合った記録として残してゆくことの課題と重要性について語った。
意見交換は来場者にも呼びかけられ、東北各地で映像アーカイブや地域の映画・映像記録の制作や上映に携わる方々から活動の報告があった。
報告:是恒