

現代中国社会の変容とその研究視座の変遷―「宗族」を通した検証

中国の父系親族組織である「宗族」をテーマとし、それが中国の改革開放政策、経済発展等によってどのような変容を経験しているのかを跡づけるとともに、研究する側の視点、すなわち文化人類学的にこの「宗族」を研究しようとしてきた研究者の視点が、近30年間の研究者内部の意識的・無意識的なパラダイムシフトにともなって、どのように変遷してきたかを問うことを目的とする。この間、中国ではかつての急進的社会主義改革の中で全否定された宗族組織が顕著な復興をとげているが、20世紀中葉の出自理論のパラダイムの中で形成された「中国人の家族・親族」に対する研究者の眼差しも、構築主義的な文化観の普及とともに大きく変化した。かつて中国人社会の人間関係の基本モデルをなすものとして注目を集めた宗族の組織原理やその倫理規範は、今日復興を遂げた宗族の一部においては、伝統文化の資源化や商品化と連動して再活性化されているように見える。これら研究対象と研究主体のダブルな変化の間の相関について、当該分野における主要な研究者の参加を仰いで討論を重ね、われわれ研究者の現在の立ち位置についての客観的理解と今後の研究展望について、一定の共通認識を確立することを目指す。そして、最終的にその成果を1冊の論文集として刊行することを目指す。

2013年度~2014年度

氏名 | 所属 |
瀬川 昌久 | 東北大学東北アジア研究センター |
川口 幸大 | 東北大学大学院文学研究科 |
稲澤 努 | 東北大学東北アジア研究センター |
小林 宏至 | 日本学術振興会特別研究員(PD) |
聶 莉莉 | 東京女子大学現代文化学部 |
潘 宏立 | 京都文教大学総合社会学部 |
秦 兆雄 | 神戸市外国語大学外国語学部 |
長沼さやか | 静岡大学人文学部 |
兼城 糸絵 | 鹿児島大学法文学部 |

成果論文集の刊行(2014年12月予定)
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