

協働による展示実践を通した人類学方法論の探求

この共同研究は、研究者以外の異分野の専門家や被調査地などを含めた地域社会との協働を通した展示実践活動から見えてくる人類学や地域研究の方法や理論の新しい地平を探求するものである。人類学や地域研究は、フィールドにおいて被調査コミュニティと関わりながら研究資料を収集する。その成果は通常論文という形で表されるが、ここでは展示という形で広く社会にむけた実践に焦点をあてる。展示の場合、論文と同様の分析結果を提示するという場合もあるが、むしろ生の資料を扱う場合も多い。さらに論文執筆過程においていわば研究者が独占的におこなってきた「分析」と「解釈」は、展示という現実空間における表象という性質上、デザイナーなどの研究者以外の専門家との協働作業がほぼ必然的に入ってくる。場合によってはさらに被調査コミュニティや調査者の帰属する国での市民社会との協働が含まれる場合もある。このことを考えると、展示は単なる社会貢献というより、従来の人類学・地域研究の方法や枠組みを再考し、刷新する契機が含まれるものなのである。本共同研究ではこの点を勘案し、展示実践がフィールドワークをともなう人類学および地域研究にどのようにフィードバックが可能か探求することを通して、その新たな研究の枠組みを模索するものである。なお本共同研究は、2010−2011年度に行われた共同研究「展示を通した北方人類学における社会還元の可能性の探求」を受けて構想された。この研究で明らかになった展示実践がつくる社会還元の可能性をふまえ、今度はそれが研究自身にどのような意義をもつのか考察しようとするものである。具体的には東北アジア・東南アジア・北米大陸での調査研究に関わる研究者の展示実践を比較する事を通して、東北アジアの人類学研究における社会的関与を含んだ人類学の可能性を展望したい。

2012年度

氏名 | 所属 |
高倉 浩樹 | 東北アジア研究センター |
落合 雪野 | 鹿児島大学総合研究博物館 |
山崎 幸治 | 北海道大学アイヌ・先住民研究センター |
久保田 亮 | 立教女学院短期大学 |
伊藤 敦規 | 国立民族学博物館 |
水谷 裕佳 | 東洋大学社会学部 |
山口未花子 | 東北アジア研究センター教育研究支援者 |

学会発表および雑誌論文
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