

中国における石炭消費削減策が大気汚染および温暖化を緩和する可能性

周知のように中国はPM 2.5(微小粒子状物質)などによる大気汚染に悩まされており、偏西風に乗って日本への越境汚染も懸念されている。一方、中国でも日本でも温室効果ガスの排出削減対策は喫緊の課題である。
温室効果ガスの排出削減がなかなか進まない中、大気汚染問題の深刻さから、2013年になって中国政府は石炭消費の絶対量での削減(上限設定)という、これまでになく厳しい政策を打ち出した。ただし、具体的な制度設計はこれからであり、既存の規制や制度(例:排出量取引制度やエネルギー税)などへの影響が懸念されている。また、石炭消費の削減には、代替エネルギーとして天然ガス、再生可能エネルギー、原子力、省エネなどの大幅な導入および利用の拡大が必要だが、これらもそれぞれ大きな課題を抱えている。さらに、温室効果ガスの排出削減という意味では、二酸化炭素回収・貯留(CCS)も大きな役割を担う。
本研究では、中国における石炭政策の具体的な現状と課題を明らかにすると同時に、中国において代替エネルギーが持つ個別の課題やCCSの開発状況を調査する。そして、石炭政策が中国における大気汚染物質および温暖化ガスの排出に与える影響を、エネルギー経済モデルなどによって定性的かつ定量的に明らかにする。また、目標の地方への分配など政策実施の際における具体的な制度的課題についても検討する。さらに、このような政策が気候変動枠組条約の下での国際交渉を前に進める可能性を探り、米国と中国、日本と中国、EU(欧州連合)と中国といった2国間での協力の現状および将来についても展望する。

2014年度~2019年度

氏名 | 所属 |
明日香 壽川 | 東北アジア研究センター |
盧 向春 | 東北アジア研究センター |
堀井 伸浩 | 九州大学 |
金 振 | 科学技術振興機構 |

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