

電磁計測技術を応用した台湾南部の津波痕跡調査

研究代表者は、台湾南部の離島、蘭嶼島で1992年以来フィールドワークを続けてきた。そこで津波伝説を聞き、島の南部にある核廃棄物貯蔵場の危険性を認識し、1771年に石垣島沖で発生した明和の大津波が、この島まで到達したのではないかと危惧し、それを警告した論文を発表した。その後東日本大震災が起き、津波被害の深刻さを自覚して、津波の専門家である中村衛教授を共同研究者に依頼して、萌芽的研究を申請した。中村教授は、琉球諸島の津波研究で実績があり、その経験を生かした台湾南部の津波調査に参加してくれた。幸いこの申請は採択されて、台湾南部の蘭嶼島での津波の痕跡調査を始めた。中村教授は、極大波浪の遡上範囲を数値計算で再現・推定する方法を導入し、岩塊が波浪・津波のどちらの原因で移動したか見分ける手法を確立し、津波で移動した可能性の高い岩塊に付着する二枚貝・サンゴ化石の炭素14年代測定をおこない、これについての論文を発表した。
研究代表者は一昨年の東北アジア研究センターの公募研究で採択され、昨年の3月、センターでの報告会に出席した。その時、佐藤源之教授の電磁波による地層研究の報告を聞き、従来の津波研究とは異なるアプローチで、是非ともこの新しい方法で電磁波により津波の痕跡がある地層調査ができないかと考えた。佐藤研究室の活動は、中村教授も承知しており、その活用について意見交換をしてきた。1771年の明和の大津波が、台湾南部まで到達したことは、当時の地震データから推測されているが、実際のフィールドワークで津波石の観測、トレンチ調査により部分的に解明されている。特に太田陽子グループがトレンチ調査により台湾台東県成功鎮で津波の痕跡を見つけている。現時点で津波の地層が点として判明している場所を手掛かりに、佐藤教授が東北地方で津波の痕跡を調査した技術を応用し、電磁波による地層調査を実施して、津波で形成された地層の広がりを明確にしたい。

2015年度~2015年度

氏名 | 所属 |
中生 勝美 | 桜美林大学人文学系 |
中村 衛 | 琉球大学理学部 |
佐藤 源之 | 東北アジア研究センター |
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