

聖書翻訳とアジアのキリスト教文化

翻訳は、少なくとも二つの言語の接触を前提としている。また、それはそれぞれの言語の背景にある文化同士の接触をともなう。それゆえ、翻訳は文化交流の動態にかかわる一つの重要な契機であり、なかでも「聖書」の翻訳は、非西洋社会と西洋近代との接触の様態を表すものとして、さまざまな観点から重要視されてきた。東北アジアにおいても、19世紀以降盛んに聖書翻訳が行われたが、それは西洋と東北アジア諸地域のあいだだけではなく、東北アジア内部における相互の宗教文化交流の歴史にも深く関連している。それにもかかわらず、東北アジアの聖書翻訳については、個別の地域を超えた動態や影響関係についての研究はほとんど見られない。そのような状況を鑑み、本共同研究では、聖書翻訳を東北アジアにおける文化交流史を新たな側面から読み解くものとして重視し、改めてその歴史を整理するとともに、その背後にある社会的・文化的文脈を明らかにすることを目的とする。
本共同研究は、昨年度まで行ってきたモンゴル語聖書翻訳についての共同研究を発展的に継承するものである。各メンバーは、東北アジア地域の聖書翻訳事業の歴史的展開や相互的な影響関係についての資料収集および分析を行う。その成果を研究会で発表するとともに、東北アジア諸地域の聖書翻訳に関する専門家を招聘し、情報交換・議論することで、東北アジア地域における聖書翻訳を通じた宗教文化交流の実態を明らかにする。
以上のような共同研究を、東北アジア研究センター教授の岡洋樹氏や同センター教育研究支援者のセチンゴアー氏と連携して進めることにより、センターにおける東北アジア地域研究の蓄積との接続をはかり、それを活用する。

2016年度~2016年度

氏名 | 所属 |
荒井 幸康 | 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター |
芝山 豊 | 清泉女学院大学 |
金岡 秀郎 | 国際教養大学国際教養学部 |
バイカル | 桜美林大学人文学系 |
滝澤 克彦 | 長崎大学多文化社会学部 |
ハイ・セチンゴアー | 東北アジア研究センター |
岡 洋樹 | 東北アジア研究センター |
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