

北東アジアにおける日本のソフトパワー

日本は「ソフトパワー」を持っているのだろうか。ソフトパワーとは、文化的な魅力で外国の人々を惹き付け、自国の国益を高めていく力である。とくに北東アジアで、日本はソフトパワーを発揮しているのだろうか。
日本にソフトパワーを付与すると期待できそうな要素として、まず、ポップカルチャーを挙げられる。マンガやアニメ、J-popは、各国で人気を博している。また、科学技術も考えられる。ハイテク国家としてのイメージは、各国の人々を惹き付けるかもしれない。ポップカルチャーや科学技術は、日本外交の資源になる可能性を秘めているといえよう。これらにより外国の人々を惹き付けることができれば、日本の国益にもつながるであろう。
では、ポップカルチャーや科学技術は、本当に、日本にソフトパワーを付与するのだろうか。とくに北東アジアの人々を惹き付け、親日感情を育み、ひいては日本外交の利益に寄与するのだろうか。この研究は、ソフトパワーという観点から、日本が持つポテンシャルを明らかにする。
この研究はソフトパワー論(国際政治学)の発展に寄与する。ソフトパワーとは、ジョセフ・ナイ教授(ハーバード大学)が90年代に提唱した概念である。以前の国際政治学は、軍事的な強制力である「ハードパワー」に関心を特化していた。これに対してナイ教授は、相手を惹き付ける力に関心を向けたのである。
このソフトパワー論への関心が最も高まった国の一つが、日本に外ならない。日本は憲法による制約を背景に、海外でハードパワーを行使できない国である。だからこそ、この国のソフトパワーが期待されたのである。
だが、ソフトパワー論は、データによる検証に乏しいという弱点を抱えている。日本のソフトパワーについても、先行研究は希望的観測にもとづく印象論に終わっている観がある。この点に鑑み、今回の研究は、ソフトパワーの概念整理を行ったうえで、中国人や韓国人のデータを集め、客観的な手法で日本がどの程度ソフトパワーを持っているのかを検証するための方法論を含めて、その効果性を評価する。

2016年度~2018年度

氏名 | 所属 |
石井 敦 | 東北大学東北アジア研究センター |
勝間田 弘 | 東北大学国際文化研究科 |
岡本 哲明 | 東北大学東北アジア研究センター |
芝井 清久 | 統計数理研究所 |
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