

仙台市博物館所蔵の矢羽の同定に基づくオジロワシ・オオワシ猟の復元

研究の目的
千島アイヌのオジロワシ・オオワシ猟の復元に関する研究の一環として、その目的に資するため。
方法
斜里町立知床博物館に保存されているオジロワシ・オオワシを用いて両種の年齢群別の尾羽標本を作製する。それらと仙台市博物館所蔵の「オオワシ矢羽」600枚とを対応させて、種・年齢群・左右何枚目かを同定し、両種の年齢群別個体数を推定する。
中川によると、オオワシは嘴や翼の色の変化などから0歳、1・2・3・4・5歳および6歳以上の識別が可能であり、オジロワシについても大泰司の予備調査によると同様である。また、マステロフによるとオオワシは7歳以上の生存率は3%前後、オジロワシも同様と考えられる。従って「オオワシ矢羽」のほとんどは6歳までで、「年齢群別尾羽標本セット」により、年齢別個体数が判明すると期待される。
伊達藩・松前藩および加賀家文書ほかより「矢羽」の交易について文献調査を行い、特に千島方面からの記録について詳細な検討を加える。「加賀家文書」の「ワシ羽分類図」に描かれた矢羽27枚についても標本セットとの対比により、種および年齢群について同定を行う。
期待される成果
狩猟管理学的手法により、年齢別個体数から当時のオジロワシ・オオワシ猟による個体群への影響、狩猟圧の状況などを復元することが可能である。オオワシ猟の復元は、瀬川、菊地ほかにより明らかにされつつある近世のワシ羽交易の解明にも役立つと考えられる。
東北アジア研究センターと共同で研究を進める理由
資料が近接する博物館にあり、関連文献の検討も行いやすいほか、東北アジア全般的な環境や自然資源に関する検討、歴史・民族学的な考察を深める上で、これまでの蓄積からの教示が得られるため。

2017年度~2017年度

氏名 | 所属 |
大泰司 紀之 | 北海道大学総合博物館 |
太子(石船)夕佳 | 北海道大学総合博物館 |
中川 元 | (公財)知床自然大学院大学設立財団 |
菅原 美咲 | 仙台市博物館 |
高倉 浩樹 | 東北アジア研究センター |
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