

蔵王火山の活動の熱的・地球化学的モニタリング

巨大地震が火山噴火を誘発したと考えられる事例は過去に多数報告されている.蔵王山では2011年東北地方太平洋沖地震の直後には異常が見られなかったものの,2013年の1月に地下の流体が関与すると考えられる火山性微動が発生して以降,微動に伴う傾斜変動,火山性地震の増加,火口湖(御釜)の部分的な白濁など,活発化を示すと考えられる現象が次々と起こっている.地震や地殻変動に関しては,気象庁や東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センターの観測網で常時観測されているが,噴気温度や温泉水の組成変化などは,現状では現地調査以外に得る方法がない.そのせいもあってか,1940年の最新の噴火や1966年の顕著な地熱活動のあとも,それらのデータは断片的にしか存在しない.
我々は2012年より御釜とその北東約1.5kmにある地熱地帯で水試料の採取・分析と噴気温度測定を行ってきたが,本研究ではそれを継続・発展させる.火山は同じような活動を繰り返す傾向にあり,過去のデータは今後の活動推移を予測する上で極めて重要である.しかし現在の活発化に対し,熱活動や湧水の組成変動については比較できる十分なデータがないのが実情である.このような状況下では,データを連続的に取ることは変動の傾向を捉える上で重要であるとともに,そのデータは将来の活発化に際し,活動推移予測に役立てられると期待される.熱活動についてはこれまでの温度測定に加え,放熱量の定量的な測定も行う.調査結果はその都度,気象庁や県の危機対策課などの関係機関にも提供し,防災にも資する.

2017年度~2019年度

氏名 | 所属 |
後藤 章夫 | 東北アジア研究センター |
土屋 範芳 | 東北大学環境科学研究科 |
平野 伸夫 | 東北大学環境科学研究科 |
久利 美和 | 東北大学災害科学国際研究所 |
松中 哲也 | 金沢大学環日本海域環境研究センター |
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