

族譜編纂活動における現代中国人の歴史意識の研究

今日の中国においては、宗族の復活現象と並行して、族譜の編纂活動も活発である。族譜は単なる祖先の系譜の記録ではなく、祖先の業績を称揚し、自らの出自の正統性や優秀性を主張するなどの歴史叙述としての性格も兼ね備えている。それは遠く前近代の祖先からの系譜を主張するものでもあり、古代以来の中国の歴史の中に自分の家族や自分自身を位置づけることにもつながっており、この点で中国の人々はそうした文化的装置を欠いている日本や欧米の人々とは異なった仕方で、自分と国家史とを結びつけたり、過去の時間的深度をイメージしたり、あるいは社会の持続性を実感したりすることが可能である場合があると考えられる。このように、中国において確立され、今日なお根強い文化的構築物である族譜を、個人史・家族史レベルでの歴史叙述の1形式として捉え、その存在が中国人の歴史に対する感覚や意識にどのような影響を及ぼしているかについて、族譜の中の具体的な叙述の分析を通じて明らかにして行く。対象とする族譜は、東京大学東洋文化研究所をはじめとする日本国内の研究機関に所蔵されているものや、代表者である瀬川がこれまでの現地調査を通じて収集したものを用いる。また、漢族のもののみではなく、回族や壮族、ミャオ族、ショオ族など、中国の少数民族の人々の族譜も考察の対象として行きたい。

2017年度~2020年度

氏名 | 所属 |
瀬川 昌久 | 東北アジア研究センター |
川口 幸大 | 東北大学文学研究科 |
西澤 治彦 | 武蔵大学 |
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