

データ駆動型解析のための「翡翠・ひすい輝石岩」の全岩主要微量元素分析と多変量解析

近年、計算機技術の進歩と数理・情報科学の進展によって、複雑系科学や文理融合の超学際分野において積極的にデータ駆動型解析手法が応用されている。地質学分野においてのいわゆる岩石学・地球化学の分野でも、岩石に含まれる複数の元素濃度の情報(全岩化学組成など)を数理・統計科学の手法でタイプ分けや成因・構造場の予想を行う試みは、過去20年の間に急速に広まってきた。上部マントル物質の部分溶融で形成した玄武岩質の火山岩は、元素の分別という観点ではプロセスが比較的単純で、かつ、ビッグデータとして利用可能なグルーバルなデータベースの登場によって、数理・統計科学の手法の有用性が評価されてきる。その一方、他の岩石の全岩化学組成の数理・統計科学による解析は手探りの状態である。Harlow et al. (2014) や Tsujimori and Harlow (2017) では、世界の主要な産地の翡翠・ひすい輝石岩の全岩主要微量元素データをまとめ、それらの特徴について論じたが、データ駆動型解析手法を応用するに至っていない。
本研究は、データ駆動型解析のための「翡翠・ひすい輝石岩」の全岩主要微量元素分析(55種類の元素濃度と強熱減量)と多変量解析を行う。翡翠・ひすい輝石岩は、構成鉱物としてひすい輝石が9割を占め、その成因にはプレート沈み込み帯の熱水が関係するという共通点があるため、データベースを構築し、多変量解析を行うには都合良い。「東北アジアにおける地質連続性と「石」文化共通性に関する学際研究ユニット」(最終年度)とそれに関連した共同研究を通して、既存のコレクションに加えて、世界各地の翡翠・ひすい輝石岩の標本を得た。本研究ではそれらの全岩主要微量元素分析を行う。多変量解析から科学的な発見を探るとともに、大学及び地方自治体が運営する博物館と協力し、得られた結果のアウトリーチ活動を検討する。

2020年度~2020年度

氏名 | 所属 |
辻森 樹 | 東北アジア研究センター |
福島 諒 | 東北大学理学研究科 |
古俣 利明 | 東北大学理学研究科 |
高嶋 礼詩 | 東北大学学術資源研究公開センター |
小河原 孝彦 | フォッサマグナミュージアム |
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