

グローバル時代の移動制限と在日コリアン

グローバリゼーションは、自在な国際間移動を前提に発展した現象である。現代の人の移動は、移住、移民にとどまらず、複数の国に拠点をおき、その拠点間を必要に応じて渡り住む人さえ生み出した。在日コリアンも例外ではない。日本に住むようになった歴史的背景や来日時期によって、戦前から住む人と1980年代以降からの人とに大きく二分されるが、本共同研究では後者のニューカマーと呼ばれるコリアンを対象にする。彼(女)らは、留学や国際結婚、就業や駐在などの理由で日本に居住する。中には、ネットや流通の発達、移動手段の拡大によって、日本に住みながら韓国を生きるような生活を送る人も少なくない。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はその状況を一変させた。COVID-19のパンデミックを受け、物流は大いに滞り、人の国際移動も制限がかかった(外国籍の人は日本を離れた瞬間、在留資格を失う)。
過疎地の沿岸部や農村に国際結婚で移り住み、10年以上暮らす女性たちの中には、水産養殖や農作業を進んで手伝う人が多い。共通して、年に一回以上は「里帰り」をする。人によってその期間や回数は様々であるが、通算すると一年の半分を超える人もいる。韓国の都会で生活した女性が多いため、慣れない仕事をしながらの過疎地での暮らしは、里帰りがあるからこそしのげるのかも知れない。就学や留学などで日本に滞在する人の中に同様の事例はいくらでもある。グローバリゼーションの時代に突如として課された移動の制限は、国境を越えるのが当たり前だったこうした人々に多大な影響を及ぼしたと考えられる。本共同研究は、COVID-19の拡大防止策によって母国との往来が制限された在日コリアンを対象に、人や物の移動の不自由さがもたらす多様な現象に注目し、その暮らしや行動にどのような変化が生じるのかを調査し、グローバリゼーションの隠れた一側面を明らかにすることを目的とする。

2020年度~2020年度

氏名 | 所属 |
李 仁子 | 東北大学教育学研究科 |
瀬川 昌久 | 東北アジア研究センター |
片岡 龍 | 東北大学文学研究科 |
佐藤 悦子 | 東北大学教育学研究科 |
金セッピョル | 人間文化研究機構/総合地球環境学研究所 |
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