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専門家・知識層や大学生等を対象にした東北アジアの地域研究に関わる市販の学術専門書。当該分野だけでなく関連する分野の研究者・学界、広範な読者層にアピールすることを通して、東北アジア研究が切り開く学知としての可能性を社会にむけて発進することを目的とする。2012年より創刊。 |
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専書26号 |
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タイトル |
連続性への希求―族譜を通じてみた「家族」の歴史人類学 |
著者 |
瀬川昌久 |
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A Desire for Continuity: An Anthropological Study of Family through an Analysis of a Pre-Modern Genealogical Book |
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A5判 |
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2021年2月25日 |
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風響社 |
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574頁 |
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本書の目的は、香港新界の一宗族の詳細な系譜記録が記された族譜を精密に読み解くことにより、前近代中国の家族生活を再現し、その背後に横たわる親族規範を解明することにある。筆者はこれまで、主にフィールド調査を通した現代中国の研究に携わってきたが、本書は文書記録の分析を通じて、過去の社会状況の解明に挑戦したものである。すなわち、一宗族の族譜から抽出されたデータのみを用いて、家族関係の実態とその背景となる親族的価値観や規範を再構成することに挑んだ研究である。
The purpose of this book is to trace family life in pre-modern China and understand underlying kinship values through a thorough analysis of a genealogical book detailing the lineage of a family in the New Territories of Hong Kong. Although the author has been hitherto engaged in the anthropological study of contemporary China mainly through field observations, in this work I have tried to trace past social conditions based on the analysis of written materials. It is a challenge to reconstruct the past status of family relations and underlying kinship values and norms in Chinese society solely through the data extracted from the genealogical books of a lineage. |
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専書25号 |
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タイトル |
近世旗本領主支配と家臣団 |
著者 |
野本禎司 |
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Feudal Lordship and Retainer of Hatamoto in the Early Modern Japan |
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A5判 |
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2021年2月10日 |
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吉川弘文館 |
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392頁 |
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近世日本において徳川将軍家の直臣、将軍直轄軍として権力の支柱であったのが旗本家である。彼らは幕府官僚職の遂行と知行所の支配をいかに両立し、近世領主として存立していたのか。旗本家の領主支配の構造と家臣団の実態を解き明かし、知行地が多く設置された江戸周辺地域にもたらした社会像を提示する。本書は、近世社会における旗本家の歴史的な位置づけを問い直すものである。
Hatamoto who played a central role as a direct vassal of Tokugawa Shogunate, how they were involved in both the bureaucracy and lordship, and how they existed as a feudal lord in the early modern Japan. By elucidating the feudal lordship and the retainer of Hatamoto, the research presents the society of Edo and surrounding villages, in which the chigyo-chi (fiefs) of Hatamoto existed widely. This book encourages the reconsidering of the historical positioning of Hatamoto in the early modern Japan. |
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専書24号 |
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タイトル |
中国の国内移動―内なる他者との邂逅 |
編者 |
川口幸大、堀江未央 |
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Internal Migration in China: Encounter with Inner Others |
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A5判 |
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2020年12月10日 |
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京都大学学術出版会 |
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311頁 |
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本書は、2億人を越えると言われる中国国内の流動人口に着目し、移動する人々が新たな地でいかに暮らし、その経験を故郷へどう持ち帰ったのか、また一方でホスト社会の人々は流入者たちどう接し、何を拒み何を受け入れてきたのか、すなわち内なる他者との邂逅が現代中国社会にもたらしたものを人類学的な視野の元に考察した民族誌的論集である。 |
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専書23号 |
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タイトル |
みちのく歴史講座 古文書が語る東北の江戸時代 |
編者 |
荒武賢一朗、野本禎司、藤方博之 |
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Michinoku History Course: The Tohoku Region during the Edo Period as Depicted in Contemporary Documents |
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A5判 |
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2020年11月1日 |
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吉川弘文館 |
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246頁 |
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本書は、東北大学東北アジア研究センター主催の歴史講座をもとに、江戸時代における東北地方の武士と村落をテーマに合計8本の論考を収載した。編者3名のほか、佐藤憲一・金森正也・高橋守克・高橋美貴・渡辺尚志の執筆者により、伊達政宗の書状、秋田藩士の大坂滞在記録、山林・温泉資源への注目、百姓一揆の実態など、古文書が伝えてくれるリアルな史実を詳しく論じている。いずれも当時の人々が思い、考え、実行した都市計画、防災に関する知恵、資源の活用など、生活力を示す事例とも言える。みなさんにも是非、お読みいただきたい。
This book contains detailed discussions of the people who lived at the time and is focused on the themes of samurai(warriors) and villages. It is based on contemporary Edo-period documents from the Tohoku region. The three editors are among the authors, including Norikazu Sato, Masaya Kanamori, Morikatsu Takahashi, Yoshitaka Takahashi, and Takashi Watanabe. The articles are focused primarily on the activities of samurai and peasants. They explore the relationship between Date Masamune and Toyotomi Hideyoshi, the daily lives of samurai, and the history of the management of forest resources and natural hot springs, and they provide analyses of the characteristics of these specific topics. |
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専書22号 |
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タイトル |
現代中国政治における国家能力の強化 |
著者 |
内藤寛子、ヴィダ・マチケナイテ |
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State Capacity Building in Contemporary China ((Emerging-Economy State and International Policy Studies)) |
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6.1 x 0.4 x 9.2 インチ |
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2020年3月27日 |
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Springer |
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123頁 |
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いかなる政治体制の政治指導者も、国家能力を強化し、それを政権の生き残りに用いる。本書は、習近平政権が最も重要な政策として国家能力の強化に注目していることを取り上げ、現代中国政治における国家と政党の関係の歴史的変遷および習近平政権下における取組を明らかにする。
This volume explores the governing mechanism employed by the Chinese Communist Party (CCP) in the light of state capacity building. It is built on the premise that regime type notwithstanding, boosting state capacity and utilizing it in their political survival is of crucial concern for any political leader. Xi Jinping, who is no exception to this, has called for the necessity to expand state capacity while he aims to centralize the power under the party. This volume stands out as it offers a comprehensive view of Chinese party-state, especially under Xi Jinping.
The research presented here is built on the analysis of authentic datasets and materials. It examines the CCP’s relations with various state organs in the Chinese political system, mainly, administrative organs, legislature (the people’s congresses), judicial branch (the people’s court system), as well as the military (the People’s Liberation Army) and state-owned enterprises. This volume attempts to bring China closer to the field of comparative politics making it a more comparable case. |
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専書21号 |
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タイトル |
幕末維新期の日本と世界 ―外交経験と相互認識― |
著者 |
友田昌宏(編者)、西澤美穂子、山添博史、ル・ルー ブレンダン、ベル
テッリ・ジュリオ・アントニオ、森田朋子、上白石実 |
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Japan and the World around the Meiji Restoration: Experience of Diplomacy and Mutual Understanding |
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A5判 |
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2019年2月15日 |
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吉川弘文館 |
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256頁 |
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幕末、列強諸国と日本は互いにどのようにとらえていたのか。日本に接近する諸国の意図を東アジア情勢の中でとらえつつ、未知の相手をいかに認識し、対峙したのかを思想や文化・風俗の面から考察。さらに不平等条約下で生じた軋轢と外交問題への対応から日本の条約理解や国内法の整備を論じ、明治維新を19世紀の世界史的視野から多面的に描く。 |
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専書20号 |
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タイトル |
震災後の地域文化と被災者の民俗誌―フィールド災害人文学の構築 |
著者 |
高倉浩樹・山口睦 |
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Post-disaster Communities, Local Cultures and Ethnography: Towards the Development of Disaster Humanities |
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A4判 |
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2018年1月31日 |
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新泉社 |
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288頁 |
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本書は、東日本大震災被災地の民俗調査等にかかわる16名の民俗学者、人類学者、宗教学者らが、災害からの時間の経過のなかで地域社会がどのような変化を遂げてきたのかを見つめ、祭礼や民俗芸能をはじめとした生活文化が持つ「再生への力」の可能性を論じたものである。具体的には4部構成であり、I「無形民俗文化財の被災と復興事業」、II「被災地からみた民俗芸能の復興・継承」、III「災害死者の慰霊・追悼と記憶の継承」、IV「被災者・家族の暮らしの再建と地域社会」からなる。宮城県に加えて、津波と原発事故の複合災害に襲われた福島県沿岸域も考察の対象とし、生活文化そのものが持つ災害からの再生と減災に果たす力について論じていることに特徴がある。これらの取り組みを通して新たにフィールド災害人文学の提唱を行った。 |
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専書19号 |
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タイトル |
スターリンとモンゴル:1931-1946 |
著者 |
寺山恭輔 |
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Stalin and Mongolia: 1931-1946 |
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B5判 |
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2017年3月27日 |
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みすず書房 |
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600頁 |
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ソ連は19世紀後半以降の流れを受けて、モンゴルへの関与をますます深めていたが、1932年に大規模な反乱が勃発すると、同年の満洲国建国に対する危機感から、ソ連と同様の政治路線は破棄され、満洲国に対する防波堤として諸政策が実行されていった。約10年の成果が1939年のノモンハン事件における関東軍への大打撃として結実した。そしてスターリンが英米中に独立を認めさせたモンゴルは、1945年8月の対日戦にも参戦して満洲国の崩壊に貢献し、戦後の国民投票で独立を果たすことになるのである。本書は、約20年間のスターリンの対モンゴル政策を、ロシアの史料館の一次史料を駆使して、丹念に追った実証的研究である。 |
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専書18号 |
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タイトル |
旅と交流にみる近世社会 |
編著者 |
高橋陽一 |
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The early modern period society inspected from the angle of the travel and the interaction |
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A5判 |
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2017年3月30日 |
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清文堂出版株式会社 |
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296頁 |
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日本において旅が大衆文化として民衆の間に浸透したのは、近世(江戸時代)のことであった。現代の大衆旅行、言い換えれば今日の代表的文化の源流を辿る意味で、近世旅行史は重要な研究テーマである。だが、歴史研究において旅の近世的特質に迫ろうとするならば、山積する課題と向き合わなければならない。それは、旅を構成する旅先・旅行者・出立地・道中・領主権力の各要素について指摘できる。本書ではこのような現状認識から、実績のある近世史研究者が藩国家・境界・環境・思想・宗教といった各々の視点から実証的に旅を論じた。本書を通して、近世旅行史研究の深化と豊かな可能性を実感していただければ幸いである。 |
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専書17号 |
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タイトル |
ソ連と東アジアの国際政治 1919-1941 |
編者 |
麻田雅文 |
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The Soviet Union and the International Relations of East Asia, 1919-1941 |
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A5判 |
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2017年2月17日 |
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みすず書房 |
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400頁 |
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ソ連の存在を抜きにして戦間期の東アジア国際政治を論ずることはできない。しかしながら史料状況等の制約により、両者の関係は従来十分に研究されてきたとは言い難い。ソ連側史料に即した研究がようやく可能となってきている現在、この戦間期国際政治の最大の空隙を埋める機は熟している。本書はそうした要請に応える画期的論文集。(みすず書房HPより) |
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専書16号 |
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タイトル |
食をめぐる人類学―飲食実践が紡ぐ社会関係 |
編者 |
櫻田涼子、稲澤努、三浦哲也 |
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Anthropology of “Eating”: Social relations constructed through eating practice |
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A5判 |
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2017年3月30日発行 |
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昭和堂 |
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266頁 |
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日常的な供食や共食の行為が基本的な社会関係を紡ぎ出すとするMonica Janowskiの論考に触発され、「食べる」行為が各地域社会における家族・親族関係など諸々の社会関係の形成にどのように結びついているのかを文化人類学の視点から考察した研究書。東南アジアの諸研究を土台に、東アジアやオセアニアの事例にも視野を広げている。新たな家族・親族研究ならびに食文化研究の方向性を模索する意欲的な試み。平成24~26年度東北アジア研究センター公募型共同研究の成果である。
Led by Monica Janowski’s concept of close connection between daily eating-together practices and social relations, contributors of this book present some case studies in Southeast Asian societies as well as in East Asian and Oceanian societies from the cultural-anthropological point of view, and try to show a new perspective in the study of kinship and food. This is the result of corporate research projects conducted by the Center for Northeast Asian Studies from 2002 to2004. |
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専書15号 |
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タイトル |
東北の近代と自由民権―「白河以北」を越えて― |
編著者 |
友田昌宏 |
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The modern era of the Tohoku district and Jiyuminken(自由民権),Over Shirakawa Ihoku(白河以北, the north of Shirakawa) |
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B5判 |
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2017年2月5日発行 |
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日本経済評論社 |
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345頁 |
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明治10年代(1877~1887)をピークに日本全土に広まった自由民権運動。その火の手はここ東北にも。戊辰戦争後、ひとしなみに「白河以北一山百文」と蔑まれた東北にとって民権運動は、後進地域というイメージを払拭する千載一遇の好機であった。その意味で、東北の民権運動は新たな国家を模索する運動であると同時に、地域の復権をめざす運動でもあったのである。かくして、「東北」の名のもとに結集した各地の民権家たち。しかし、彼らのあいだでは対立がたえなかった。また、民権運動とは反対の立場を取った人々もいる。つまり、彼らは「白河以北」でもって結びつきつつも、それぞれの「白河以北」を背負っていたのである。本書はこうした東北の民権運動の実相に多角的に迫る。
The Jiyuminken(自由民権) movement, reached the peak in 10’s in the Meiji
era, extended to the Tohoku district. For this district, has been called
“Shirakawa Ihoku Ichizan Hyakumon(白河以北一山百文, it means that they
can buy a mountain by one hundred mon to the north of Shirakawa)” and
despised as the inferior district after the Boshin War(戊辰戦争), the
movement was a good chance to dispel the disparaging name. In this way,
for this district it was the movement not only to look for a new
structure of the state, but also to rehabilitate Tohoku. Thus activists
gathered to unite under the name of Tohoku. But they always were opposed.
And there were the people that were against the movement. In other
words, the people of this district united by “Shirakawa Ihoku” and
shouldered different “Shirakawa Ihoku”. This Book approaches real facts
of the Jiyuminken movement of the Tohoku district from many other ways.
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専書14号 |
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タイトル |
僑郷―華僑のふるさとをめぐる表象と実像 |
編者 |
川口幸大、稲澤努 |
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Qiaoxiang: Home of Overseas Chinese |
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A5判 |
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2016年3月20日発行 |
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行路社 |
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315頁 |
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本書は、僑郷、すなわち中国系移民の故郷が、中国国内、移住先、さらに世界規模の政治・経済的な動態の中でいかにして構築され、変容し、そして新たなイメージを賦与されて創造されているのかを人類学的な視点から考察しようとするものである。具体的には、「“豊かな海外、貧しい僑郷”パラダイムの刷新」、「海外から見た僑郷」、「“新しい”僑郷」という三つの視座から、僑郷の表象と実像を描き出してゆく。 |
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専書13号 |
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タイトル |
「宗教」と「無宗教」の近代南島史―国民国家・学知・民衆― |
著者 |
及川 高 |
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The “Religion / Irreligion” Discourse in Modern Japanese Cultural Border Zone :Nation State, Scientific Research and Social Dynamics |
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A5判 |
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2016年2月29日発行 |
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森話社 |
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328頁 |
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日本の南西諸島(奄美・沖縄)ではシャマニズムや共同体祭祀など、本土=ヤマ
トとは異なる民俗信仰が息づいている。本書はそれらの信仰が近代の学知におい
ていかに「宗教」として対象化され、また排除されてきたのかを解明する試みで
ある。明治期には「宗教」をめぐる知は近代化や啓蒙と結びついており、「無宗
教」は解決すべき政治課題とされた。しかしやがて民主主義の実現に伴い「宗教」
は生得的な資質と考えられるようになり、このことによって民俗信仰は国民国家
の資源へと転化していく。この知の変容は、南島民俗社会に生きる人々の行動へ
と反映され、キリスト教の受容を典型とした社会動態を生み出していくのである。
Unlike the Japanese mainland, the core of the religious culture of the
Ryukyu Islands (Amami and Okinawa) is folk faith. This book discusses
the historical process through which these traditional beliefs,
especially shamanism, community ritual and ancestor worship were
recognized as “religion” in modern Japanese discourse. Because of the
ideological connections between “religion” and “enlightenment” in modern
Japan, in the Meiji era governments and intellectuals considered “
irreligion” as a political issue that was required to be solved. However,
due to a change in the recognition of “religion” as a human universal
in the Taisho era, folk faith began to be included among religions in
order to utilize it for democracy and national identity. This change of
discourse was reflected in the practice of the people, and generated
social dynamics in the modern Japanese cultural border zone. |
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専書12号 |
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タイトル |
東北からみえる近世・近現代 |
著者 |
荒武 賢一朗 |
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The modern local history of Northeast Japan : To a history image rich from various viewpoints |
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A5判 |
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2016年3月10日刊行 |
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有限会社岩田書院 |
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302頁 |
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東北地方の歴史イメージは、どのように形成されてきただろうか。私たちは豊富
な歴史資料をもとに、この地域に暮らし、学び、働いてきた人々へ注目し、その
歴史的特質を明らかにした。本書は、17世紀から20世紀にかけての事例を取り上
げ、「埋もれていた宝の山」とも言うべき未発見だった資料を多用し、新しい歴
史像の構築を目指している。江戸時代の領主や武士、経済政策や商業発展、ある
いは人物の歴史や思想的背景など、社会形成のありようを詳しく紹介した。
How is the history image of the Northeast Japan formed? Based on
abundant history data, we lived in this area, observed to learning and
people that have worked, and clarified that actual condition. This book
took up the example from the 17th century to the 20th century, used
abundantly the undiscovered data which should also be called "treasure
mountain", and aims at construction of a new history image. We presented
history, an ideological background, etc. of a feudal lord, a samurai and
an economic policy, commercial development, or a person in detail. |
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専書11号 |
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タイトル |
世界とつなぐ 起点としての日本列島史 |
著者 |
荒武 賢一朗 |
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History of the Japanese Islands linked to the world |
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A5判 |
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2016年2月20日刊行 |
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清文堂出版株式会社 |
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357頁 |
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書名に掲げた「起点としての日本列島史」とは、列島内部の歴史分析、日本と他地域の交流史を、「日本史」に収斂させることなく、日本から発信してより広い視座で議論をしたいという試みから名付けたものである。東北アジア研究専書の一冊として本書は、17世紀から20世紀における経済や外交に軸足を置き、そこから政治、社会、文化の諸問題へと展開した。もちろん日本列島の研究ではあるが、同じ東北アジア地域の中国や朝鮮半島との関係、あるいは当時の人々が交渉した「現場」を明らかにしている。
We named the result of research "History of the Japanese Islands linked to the world." This does not confine the history analysis inside islands, and the history of exchange of Japan and other areas in "Japanese history." Therefore, we are arguing the historical fact of Japan in large area. Paying attention to the economy and diplomacy in Japan in the 17-20th century, we perform detailed consideration of still more nearly individual politics, society, and culture. Although it is research of the Japanese Islands, of course, this book is CNEAS Books series and investigates the relation between China of the same northeast Asian area, and Korea. There is meaning which clarified the "spot" for which people in those days negotiated in it. |
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専書10号 |
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タイトル |
スターリンと新疆:1931-1949年 |
著者 |
寺山 恭輔 |
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Stalin and Xinjiang: 1931-1949. |
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A5判 |
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2015年3月27日刊行 |
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社会評論社 |
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638頁 |
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満洲事変から中華人民共和国の成立に至るまでの約20年にわたるソ連の対新疆政策は、これまで一次史料に基づいた研究はほとんど存在しなかった。漢族が多数を占める中国にあって、圧倒的多数を占めるムスリムのウイグルのほか少数民族も多い新疆では、中国本土から隔絶されていたため隣接する中央アジア諸国やロシア・ソ連とも歴史的・経済的に深い関係を有していた。特に1931年の満洲事変と翌年の満洲国設立後、モンゴル、新疆への日本の進出を懸念するようになったスターリン指導部は新疆内の反乱鎮圧のために何度か赤軍を派遣して地方政府を助けた。本書ではスターリンが独裁的な権力を確立して以降、主要な対外政策決定の舞台であったソ連共産党中央委員会政治局における諸決定を跡付けることによって、新疆に対するソ連の関与の実態、特徴を明らかにしている。
Xinjiang (Eastern Turkistan) dominantly populated by Muslim Uighurs and other miscellaneous peoples, situated far from central China had traditionally strong economic relationship with neighboring central Asian countries, Russia and Soviet Union. After the Manchurian Incident(1931) and the formation of “Manchukuo” next year, the influence of the Soviet Union, which has begun to worry about the possibilities of Japanese invasion into this region, has increased intensively and dispatched Red Army several times into Xinjiang in order to support pro-soviet local government against mutinies. Based on the Russian firsthand materials newly founded in several archives, this study illuminates the process and characteristics of this soviet involvement in Xinjiang inner politics from the beginning of 1930’s until the establishment of People’s Republic of China. |
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専書9号 |
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タイトル |
越境する宗教 モンゴルの福音派―ポスト社会主義モンゴルにおける宗教復興と福音派キリスト教の台頭 |
著者 |
滝澤克彦 |
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Religion across borders: Rise of Evangelicals in the post-socialist Mongolia |
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四六判 |
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2015年3月20日刊行 |
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新泉社 |
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283頁 |
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70年近く続いた社会主義体制の崩壊は、モンゴルに宗教の自由化をもたらした。仏教やシャマニズムなど既存の宗教の復興のかたわらで、新たに教線を急拡大してきたのが福音派キリスト教だった。信教の自由を獲得した人々の一部は、なぜ「伝統的」な宗教ではなく別の宗教へ向かっていったのだろうか。本書では、この現象を現代世界における「宗教の越境」の一つして捉え、そのきわめて複雑な過程を丁寧に解きほぐすことによって、流動化が増す現代社会において宗教を捉える新たな視座を提供する。
Evangelical Christianity has rapidly grown in Mongolia where the social situation has dramatically changed since the collapse of about 70 years of socialist system. In this book I carefully analyzed this complicated phenomenon of "religion across borders" which occurred in the entanglement of multi-layered dimensions, and tries to give a new paradigm to grasp "religion" in the growing liquidity of modern society. |
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専書8号 |
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タイトル |
屎尿をめぐる近世社会 ― 大坂地域の農村と都市― |
著者 |
荒武賢一朗 |
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Circulation of human waste manure in the early modern Japan : the farm villages and city of the Osaka area |
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A5判 |
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2015年1月31日刊行 |
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清文堂 |
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326頁 |
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私たちが生活する現代において、排泄物は無用であり、処理の対象である。しかし、江戸時代の日本では商品価値の高い「宝物」であった。本書では、17世紀から19世紀の大坂で活発だった屎尿の取引について詳しく考察をした。最近の環境論で、江戸時代はリサイクル社会だと評価されており、屎尿処理についてもその実例として述べられている。それより重要なことは、清潔を目指す以前に屎尿は人々にとって価値の高い商品だったことである。その結果、村落と都市は関係を結び、社会環境も整備された。当時の人々がつくり出した社会の形成史として本書を御覧いただければ幸いである。
In the present age on which we live, excrement is unnecessary and is an object of processing. However, in the early modern Japan, it was high "treasure" of commodity value. In this book, I analyzed in detail about the dealings of human waste currently performed by Osaka in the 17th century to the 19th century. It is estimated that the Edo period is recycle-societies by the latest environmental theory, and treatment of human waste is also described as the example. Having been much more important is that human waste was goods worthy for people. I am pleased
if looking gets this book as a social history of formation which people accumulated. |
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専書7号 |
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タイトル |
展示する人類学―日本と異文化をつなぐ対話 |
著者 |
高倉浩樹(編) |
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Anthropologist Doing Exhibition: Dialogue between Field and Home |
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A5判 |
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2015年1月30日刊行 |
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昭和堂 |
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272頁 |
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人類学は旅の学問である。研究者は異境へと赴き、そこでの見聞を故郷へと伝えるからである。旅はそこで終わるわけではない。人類学者は再び異境へと赴き、今度は逆に異境に対して故郷を伝えようとする。本書はこのような人類学の営みのなかで、研究成果を展示という形でおこなった人々の記録である。と同時に、そこから得られた研究を社会に開くということの可能性を探求するものである。論文という枠に留まらない、博物館という制度にも収まらない、新しい形のアウトリーチへの挑戦の書。
Anthropology is a science of traveling. A researcher visits the field afar and then return home and narrates their experience. The traveling is never ending process. Anthropologist now returns to the field and explains their home to the people at field. This book is to uncover these processes and in which anthropologist organizes the exhibition for publishing their research result both at field and home. Exciting new type of outreach is shown from each author from field of Japan, Siberia, North America, and Southeast Asia. |
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専書6号 |
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タイトル |
ロシア綿業発展の契機―ロシア更紗とアジア商人― |
著者 |
塩谷昌史 |
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The Development of the Cotton Industry in Russia, Russian printed cotton and the Asian merchants |
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A5版、ハードカバー |
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2014年2月25日刊行 |
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(株)知泉書館 |
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252頁 |
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帝政ロシアとりわけ19世紀前半におけるロシア綿業の発展を通して、ロシアの初期工業化の実態を解明する。ロシア綿業の発展と共に、ロシア製更紗がアジア市場に輸出される。ロシアはペルシア、中央アジア、清などのアジア市場へ製品を輸出する際、アルメニア商人やブハラ商人、山西商人などの近隣商業圏の既存の商業ネットワークを活用した。従来の経済史が生産重視であったことを省み、年周期で営まれていた遠隔地貿易の流通構造や消費者ニーズも研究対象とする。また、自然環境と人間の関係に着目し、民俗学で開発されたモノの研究を援用し、ロシア製更紗の生産・流通・消費を一連の回転と捉え、ユーラシアにおけるモノの流れを明らかにする。
In the first half of the 19th century, the productive forces of the Russian cotton industry grew to international levels. I examine the problem of why the Russian cotton industry developed in the first half of the 19th century. Viewing the production, distribution and consumption of cotton fabrics as a series in a cycle, I examine the production of cotton fabrics by entrepreneurs, the trade in cotton fabrics by merchants, and the utilization of cotton fabrics by consumers, on the basis of the available historical literature. I also take into consideration the relationship of man and nature from the perspective of cotton fabrics. |
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専書5号 |
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タイトル |
ヘラジカの贈り物:北方狩猟民カスカと動物の自然誌 |
著者 |
山口未花子 |
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Gift of /in the moose : Natural history of northern hunter Kaska and Animals |
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B6版、ソフトカバー |
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2014年2月10日刊行 |
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(株)春風社 |
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378頁 |
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本書は、野生動物に大きく依存してきた北米の狩猟採集民カスカの狩猟を中心とした人間と動物との関係を、活動の量的なデータによる生態学的な分析とともに、参与観察によって明らかになった世界観や文化的・社会的な側面についても記述したカスカと動物の自然誌である。さらに、東北アジア地域を含む人類の北方適応を支えた狩猟文化の形成や、人と動物を、同一性を持つものとしてとらえる思考といった重要な知見について検討している。また、伝統的狩猟社会が現代社会の中で変容しつつも、狩猟という活動を通して再生産されている様子についても報告している。
This book is based on anthropological paradigm known as Shizenshi, which is a systematic description of hunting system of Kaska North American indigenous people, as a theoretical framework to present and analyze the relationship between Kaska and animals as an activity system with ecological, cultural, social and religious aspects. Also focused on how human being adapted to the northern environment include the Northeast Asia, and how northern people development view of world known as “original oneness”. In addition, this book reported Kaska people is
reproduced their society based on Traditional hunting also social and economic activity of modern society as a one of Canadian community. |
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専書4号 |
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タイトル |
「創られた伝統」と生きる ―地方社会のアイデンティティー― |
著者 |
金 賢貞 |
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Living with Invented Tradition: Local Identity of Contemporary Japanese Society |
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A5版、ハードカバー |
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2013年9月28日刊行 |
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(株)青弓社 |
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280頁 |
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本書は、一般に「石岡のおまつり」として知られる、茨城県石岡市の「常陸國總社宮大祭常陸國」の歴史的構築のプロセスと、それに関わる人々の社会的実践と認識の諸相に分析の中心軸を置きつつ、そこに見え隠れする「過去」への関心や「伝統」の主張という歴史再帰的実践を、石岡という地方社会の歴史的コンテクストのなかで明らかにし、現代日本における地方社会のアイデンティティーを実証的に論じた研究成果である。特に、いわゆる「伝統文化」に対する本質主義的観点のアンチテーゼとして適用される構築主義的観点の有効性や重要性は認めつつも、現地の人たちとの密接な関わり合いのなかで進められる現場性の高い研究であるが故に、構築主義的アプローチによって生じる問題の重大性を指摘し、その克服を試みた点、さらに、現場中心の民族誌的研究に欠けやすい歴史的記述を重視した点に特色がある。
This book analyzes the historical constructive process of “Hitachi-no-kuniSōsyagūTaisai,”(literally “the main festival of the Hitachi-no-kuniSōsyashrine”) or generally known as “Ishioka-no-omatsuri” which has been performed in Ishioka, Ibaraki prefecture and recursive practice as concern with the past and the claim of tradition hidden in various social practice and recognition of local people involved in the shrine festival in the historical context of Ishioka as a peripheral society, and empirically argues the local identity in contemporary Japan. It is noteworthy that the author tries to cope with the problem of constructionism perspective, even though it has its own significance and effectiveness as the antithesis of the essentialism perspective toward so-called tradition, which is caused by the fact that the field-centered study need to interact closely with local people and offers a valuable historical description which the field-centered ethnographic research can overlook. |
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専書3号 |
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タイトル |
現代中国の宗教―信仰と社会をめぐる民族誌 |
著者 |
川口幸大、瀬川昌久 |
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Religion in Contemporary China |
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A5、ハードカバー |
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2013年1月30日刊行 |
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(株)昭和堂 |
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281頁 |
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急激な社会変化の途上にある現代中国において、道教、仏教、キリスト教、イスラーム教などの既成宗教やそのカテゴリーにはあてはまらない新興宗教、民間信仰などが、共産党の政策と民衆の生活経験の変化のはざまにあってどのような実態を示しているかについて、フィールドデータに基づいて明らかにしている。政治経済事象のみではなく、より社会の底流部分から現代中国社会を理解しようとする意欲的研究成果である。
Based on intensive field research, authors try to describe the latest status of religious beliefs and practices in China, including the established religions such as Taoism, Buddhism,
Christianity, and Islam, as well as the newly emerged religious movements and traditional folk religion. All of them have been under the strong control of communist government and at the same time now are under the encounter with a rapidly changing social condition of contemporary China. This is a very challenging study for its efforts to understand today’s Chinese society not only through its politico-economical phenomena but also from the depth of cultural and religious dimension.
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専書2号 |
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タイトル |
極北の牧畜民サハ:進化とミクロ適応をめぐるシベリア民族誌 |
著者 |
高倉浩樹 |
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Arctic pastoralist Sakha: Ethnography of evolution and micro-adaptation in Siberia |
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A5判 |
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2012年1月30日刊行 |
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昭和堂 |
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301頁 |
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ロシア連邦サハ共和国に暮らすステップ起源の民族サハ。彼らは極寒のシベリア・タイガで牧畜を営む。その生業文化を人類進化論的に位置づけつつ、社会主義から市場経済そしてグローバル化にいかに適応し、その文化的多様性を維持しているのか解明する。ポスト社会主義人類学の視座からの地域研究的な記述説明と、文化史的な長期の時間の視座からの理論的説明を組み合わせた点に特徴がある。ダーウィン進化概念の方法論的可能性をふまえながら、生業複合の地域進化を論じたシベリア民族誌である。
This book expands the ethnographic description of the horse-cattle pastoralists Sakha in Eastern Siberia and its cultural ecology. Following the collapse of the Soviet Union, the global economy directly influenced Sakha society in various ways and for various reasons. An approach which integrates both the short-term perspective from my own field of ethnography and a long-term cultural historical perspective offers fresh insights into these effects. |
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専書1号 |
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タイトル |
近現代中国における民族認識の人類学 |
著者 |
瀬川昌久 |
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Masahisa Segawa An Anthropological Study on the Images of Ethnic Group in Contemporary China |
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A5判 |
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2012年1月30日刊行 |
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昭和堂 |
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270頁 |
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費孝通の「中華民族多元一体構造論」にみられる民族認識を分析し、その諸特徴を明らかにした。その上で、広東のヤオ族、ショオ族、海南島のリー族、広西の蔗園人、広東、海南、福建、広西の客家、雲南のタイ族、南京の回族、貴州のトン族、ミャオ族、四川のチャン族等の現地調査を実施し、漢族を中心とするネットワークへの周辺民族の連接過程や、近代化の中での国家への組み込み、現代的社会状況の中での民族間関係の変化などを具体的に検証し、費孝通の立論の背景、学術的価値、そして限界について一定の理解に到達した。
By reviewing Xiaotong Fei's vision on Chinese Nationalities, we extracted several important features of his concept 'minzu'. Then, based on fieldworks among Yao and She in Guangdong, Lee in Hainan, Zheyuanren in Guangxi, Dai in Yunnan, Hakka in Guangdong, Hainan, Fujian, and Guangxi, Hui in Nanjing, Dong and Miao in Guizhou, and Qiang in Sichuan, we made case studies on the historical process of minorities' articulation into the network of Han Chinese, the process of their integration into the modern nation state, and the changing pattern of inter-ethnic relation under the China's recent social condition, through which we have reached some understanding on the background, the academic value, and the limits of Fei's vision. |
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東北大学
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